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薄闇シルエット:角田光代:素敵な主人公

「薄闇シルエット」(79/2021年)

結婚(している人にとっては離婚)とか、仕事とか、友人とか、家族とか。生きていく、と書くと大袈裟かもしれないので、生活していくために対応していかないといけない事項があります。

その事項に対して、前向きに楽しい気持ちで向き合えるのか、それとも悲観的な問題として止むを得ず対処していくのか、人によって異なると思います。この作品の主人公、ハナはバランスよく生活していると思いました。過剰に楽観的でもなく、異常に絶望的でもなく、人生で経験してきたことや学んだことをベースに適切な判断をしている信頼できる人間だと思います。

だからこそ、いつも何かに不満を感じているのだと思います。そしてハナのことを素敵だと思うのは、その不満を解消しようと何かしらの努力をしていることです。不満を消したり隠したりしないのです、ハナは。だからイラつきます、嫌になります。でも、それを受け止めて、生活しているのです。

物語の冒頭、ハナは結婚を拒否します。この選択、僕は正しいと思いました。ただ、流れで結婚する選択も間違っていないと思います。結婚してすぐさま離婚するもアリだし、新しい二人の関係値が発見出来て楽しい生活が待っていたのかもしれない。

ハナは自分だけの何かが見つからなくて悩むのですが、それはハナが最適な選択をしてきたからだと思います。正しい、間違っているは分かりません。でも、その時に最適な道を選ぶことは大切なんだなと思いました。久しぶりに出会った素敵な主人公でした。



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