神はいつ問われるのか?:森博嗣:神の決め方
「神はいつ問われるのか?」(138/2020年)
WWシリーズの2作目。去年の7月以来か、少し間があいてしまった。本作は仮想空間の話。所謂「マトリック」的な話です。
主人公、グアトは、今自分はどこにいるのか、仮想世界が作った仮想世界の中にいるのでは、なので今はまだ仮想世界なのでは、不安になります。でも、そもそも本当とか仮想とか区別すること自体がナンセンスなのでは、という気持ちにもなります。もちろん、読者もグアトの感情にシンクロしていきます。グアトが深刻な問題をあっさりと受け入れて、処理していく、もしくは処理することを諦めて次に進んでいく様が本シリーズの醍醐味だったりします。
仮想がどこまで現実に近づくか、という問題ではないのですよね。現実と仮想が同じになることは意味が無いのです、きっと。人が仮想を受け入れること、つまり現実を見限ることが大事なんでしょう。人の脳は不必要な情報を無視することが出来ます。自分に都合の良い解釈をする力です。いつ、人は仮想に寄り添うのでしょうか。
仮想内で経済活動が可能になれば、現実から仮想への移行が実施されるのかも。いや、完全に移行するのではなく、併行して生きていく社会はやってくるのかもしれません。
仮想世界の「神」は誰がやるのか。「神」をどうやって決めるのか。人工知能が合議制で「神」を運営していくのか。
で、今回、久しぶりにミステリ作品色が濃いかと。ちゃんとした謎が提示され、それがバッチリ解決します。気持ち良いですよ。