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写楽:皆川博子:半端ない皆川に激しく同意
「写楽」(145/2021年)
今年、最後は江戸で過ごしました。皆川博子、間違いない。
1994年作品なんですね。皆川自身が映画「写楽」のシナリオ執筆のリクエストを篠田正治監督とフランキー堺から受け、その流れというか勢いで自ら小説化したという作品。更にはコミック化もされたようなので、コンテンツの力、半端ない。
本作品、軸は写楽ではなく蔦屋重三郎の方です。今でいう出版社のヤリ手社長、重三郎の浮世絵をめぐる物語。写楽がタイトルだと普通は「誰が写楽なのか?」というミステリだと思ってしまいますが、ちょっと筋が違います。もちろん皆川です、「なるほどね」という写楽を書き上げてくれていますが、その正体のことよりも、重三郎と「画家」との交流にドラマを感じます。写楽以外にも歌麿などの有名人も登場しますが、重三郎がどうやって「画家」とビジネスするかという様がワクワクします。
また歌舞伎に関する愛もヒシヒシと伝ってきます。歌舞伎があっての浮世絵というビジネスの側面をしっかり描いているところが深い。いまはSNSで拡散ですが、当時は絵で拡散だったのです。そして、オリジナルのコンテンツに関するレスペクトは変わりません。本作の写楽は、他の作品の写楽よりも歌舞伎愛が濃いのです。だから、あのような浮世絵が書けたのだという皆川説に激しく同意です。
また、なぜ短い期間しか描いていないのかという理由も実に粋です。それほどまでに重三郎が重要だったということです。プロデュースする人がいないと大きな花は咲かないのです。
ということで、今年も1年間、145冊の小説を読ませていただきました。小説というコンテンツに係わるみなさんに感謝です。来年のよろしくお願いします。