戦の国:冲方丁:生まれただけでドラマチック

「戦の国」(110/2020年)

織田信長、上杉謙信、明智光秀、大谷吉継、小早川秀秋、豊臣秀頼。6人の武将の物語。お恥ずかしながら、後半3人に関しては殆ど知識が無かったので、非常に興味深く読めました。

どの物語も、一般的に語られている内容とはチョット違った角度から攻めています。中でも「麒麟」明智に対する解釈は驚き。大河ドラマの明智のイメージとシンクロする所もあり相反する部分もあり、ドキドキしてしまいます。そして、本能寺の「訳」は、ある意味爽快です。

あとは豊臣秀頼。是非、彼を主人公にして大河ドラマを作ってほしいです。実に切ない。自分が生まれてしまったせいで、一体どれだけの人の命が奪われたのだろうか。生まれただけでドラマチック。戦国時代最大の「運命の人」だったわけですよ。

「大谷vs小早川」も面白かった。関ヶ原の最大の事件を、本当にその場で見ているような錯覚に襲われました。裏切りといっても、現代の裏切りとはニュアンスが少し違うのかもしれない。今でいうビジネスの条件面での交渉に近かったのかも。

そして、全てに通じるテーマが「道」を制する者が勝つ。当時の道は人、物資、お金、情報、全てが流れる。そこに経済圏が発生し、富を生み出す。道を操作して流れを作る、逆に流れを止める。そこを支配した者が権力を持つ。その視点、言われれば当然ですね。興味深かったです。

歴史小説、面白さに切りがない。そして、日本に生まれて良かったな、と思いました。

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