インド倶楽部の謎: 有栖川有栖:動機はいいんです
「インド倶楽部の謎」(124/2020年)
国名シリーズです。なので、本格です。実に本格です。
徐々に事件の本質が明かされていく感じは、警察ミステリに近い感じがしました。僅かな手掛かりを丹念に探していくうちに真実にたどり着く地道な展開が面白かったです。今回は野上さんの活躍が光っています。
ですが、普通の警察ミステリと異なるのは「動機」に関するところでしょうか。僕はこの犯人の「動機」に今一つ納得できないが上に、本作の本格度がアップしていると思います。
動機はいいんです。動機はなくても、その人しか犯罪を実行できないというロジックが固まれば、それで良いんです。犯人しか知らない「事実」という一点で全てがクリアになる爽快感、僕はここに本格を感じました。なるほど、ここだったのか、という驚き。確かに、これだけ伏線を貼ってくれているのに気が付かない己の愚かさよ、、、アーメン、じゃなくてナマステ(笑)
本作は前世での人間関係が事件の核となります。前世を信じるか、信じないか、という問題も検討しつつ、物語は現世でどんどん進行していきます。過去の哀しい事件と連続殺人の関係は、といった盛り上がりポイントも充分。インドの占いもなかなか素敵です。
あと、火村と有栖川の世間話も面白かったです。仲が良い二人の情景を思い浮かべるのも楽しみですね。