Salesforceの営業が常に意識する“4つの不”〜不信・不要・不適・不急〜
不信・不要・不適・不急このフレーズを聞いたことはありますでしょうか?
これは、お客様が何かを買うときに生じる心の壁を表しています。
4つの不という概念は、どちらかといえばマイナーで、私もSalesforceに転職するまでは知りませんでした。
ただ、Salesforceでは非常に大切にしている概念で、入社1ヶ月目の集合研修でも“4つの不”というセッションがあるくらいです。
今日はこの4つの不について、Salesforce的なエッセンスも織り交ぜつつ解説いたします。
4つの不の基本的な考え方
企業がモノも買う際、大きく2つの分類ができます。
・コピー用紙を始めとする絶対に買わないといけないモノ
・Salesforceやその他便利になるあったら良いなというモノ
この後者における、あったら良いなというNice to Have商材を買う際は、基本的に人は買わない理由を作ろうとするそうです。
その買わない理由は、不信からスタートし、以下のように変化していきます。
そして、最終的に、この4つの不という壁を乗り越え、
「買わない理由がなくなったとき」に受注ができる。という考え方です。
では、この4つの不の具体的な説明と、その乗り越え方をご説明します。
①不信
まず、不信からスタートします。
例えば、googleで「顧客管理,BtoB」といったキーワードで検索すると、様々な情報が出てくると思います。
そんな状態の時に、ふと、このようなページに迷い込んでしまう事があると思います。
そして、ここの資料をダウンロードするためには、電話番号とメールアドレスが必要になります。
そして資料をダウンロードしたら最後。
インサイドセールスと言われる部隊から即座に電話がかかってきます。
「先程、Webから2億円の会社を10億円にするアクションという資料をダウンロード頂きありがとうございます。今回はどのような理由でこちらの資料ダウンロード頂いたのでしょうか?」と。
みなさん、どう思いますか?僕ならこう思います。
「いや、お前誰だよ。」
この感情が不信です。
このように、資料をダウンロードした瞬間ならまだ良いのですが、
2年前にダウンロードしたかもしれない資料の件で電話してくるとか、
突然送りつけられた手紙をキッカケに電話してくるとか。
まぁ、「お前誰だよ」って感じなんです。
この不信の壁は4つの不の中で最も高い壁で、主にアポイントを取る時点の壁となることが多いです。
私も自分で会社を経営するようになり、びっくりするくらい多くの電話をいただきますが、常々、「お前誰だよ」という感じになります。
では、このお前誰だよという不信をどのように乗り越えるかというと、
ちゃんとした会社であることを伝えるのです。
Salesforceを例にすれば、
「弊社は世界で15万社以上に活用頂く顧客管理の会社で、トヨタさん、日本郵政さんなどにご活用頂いております。」
→世界で15万社というフレーズでなんか凄そう
→トヨタさんや日本郵政さんが使っているなんて凄そう
のように、不信の壁を超えるのです。
具体的に不信の壁を超える為に使えるフレーズ集としては以下の通りです。
・国内(世界)でXX社に使ってもらっている
・大手企業に使ってもらっている
・上場している
・XXから資金調達している
・シェア1位
・顧客満足度1位
・継続率90%
等
また、この不信の壁を突破し、アポイントが取れたとしても、営業の初回訪問時に不信は完全になくなっていません。
私はよく「営業は全員不審者だ。だから、極力不審者オーラを消せ。」と言っております。
ここでは身だしなみや、振る舞いも含めて見られております。
また、初回訪問においては、アイスブレイクと丁寧な会社紹介を心がけるようにしています。
アイスブレイクについては大変良い記事があるので、そちらをご参照ください。
また、会社紹介のテクニックとしては、数字を積極的に使うことで不信を取り除く事ができます。
次はZuoraを例にすると、
我々は2007年にシリコンバレーで創業し、今年13年目の会社です。現在、世界26カ国で1000社以上のサブスクリプションの支援をしており、顧客満足度は95%を超えております。
という形になります。
では、不信の壁を超えて、アポイントが取れた状態や、「じゃあ、そろそろ御社は何やってるか聞きましょうか。」という状態になったタイミングで発生する次の壁を紹介します。
②不要
この不要は、
「あ、御社は顧客管理のシステム売ってる会社なのね。さらに世界1なのね。それは分かったよ。でも、特にニーズ感じていないよ」
というお客様の心理状態である段階です。
この段階では、お客様が不完全な状態であるを理解して頂くことで、突破できることが多いです。
めちゃくちゃ雑な例えを出すと、
身長160センチ、体重100キロの人しか住んでいない町があったとして、そこに住んでいると、自分が太っていることに気づかないと思います。
そこに、「隣町はこうですよ。」というあるべき姿を見てもらうことで気づいてもらうようにします。
これをSalesforceの例にすると、
現在、営業の活動はExcelで管理されているとお伺いしましたが、例えば、3ヶ月連続で「今月の役員会」で決まるって言ってる営業とか、ある日突然、「Aランクの商談が消えていた」なんてことはありませんか?
というように、不完全な状態に気づいて頂くのです。
私はコレを過去にも、「問題と課題の違い」として解説しているので、そちらをご確認ください。
個人的にはお客様の目の前で「御社の課題は」というフレーズを使うのは好きではなく、「今後のチャレンジ」って言い換えたりするほうが素敵だと思います。
では、次に不適の解説・・・
の前に補足です。
補足:Salesforceにおける案件化の定義
Salesforceにおける案件化の定義は、
“お客様の課題を把握し、それをSalesforceが解決できる”です。
なので、この不適の段階で、多くの仮説であったり、ヒアリングをすることで案件化がなされます。
例えば、「とにかく営業を強化するんじゃ!」というお客様に対してヒアリングをしてみると、
※まずは営業の人数を倍にしたい
というヒアリングができると、それはSalesforceが解決出来ないから案件ではありません。
ただ、トップセールスとその他の営業の大きな差はココにあります。
優秀な営業の場合、
「なぜ営業を倍にするのか」という部分を深堀りしていき、
「それは今の人員で倍にできる体制にできれば良いのではないか?」というディスカッションを深め、案件化することが出来ます。
つまり、お客様の表面的な課題やニーズだけで話をしていてはいけないという話です。
③不適
少し脱線しましたが、3番目の壁である不適です。
不信の壁を超え、不要の壁を超えた段階だと、基本的にその製品はそのお客様にとって価値があるものとして間違いはありません。
ただ、買う側からしてみたら、
「この営業さんの説明が上手で、簡単って言っているけど、
本当に使いこなせるんだろうか」
という感情になるのです。
この不適という段階は、
「買っても使いこなせない」
「うちにとっては高価すぎるかもしれない」
「これが最適な選択なんだろうか」
という心理状態になります。
ここでは、
・導入後のサポート体制
・活用イメージ
・事例
・価格の説明
・機能の説明
等
をとにかく懇切丁寧にご説明する必要があります。
勢いに乗ってここをゴリっと進めてしまう営業も多いのですが、それは間違いです。それはタダの押し売りです。
私がSalesforce時代に大変お世話になったマネージャからの言葉をそのまま引用させていただきます。
「不適の段階では懇切丁寧にすること。
ここを勢いで進めようヤツをバカといいます。認めません」
では、最後の不急の説明です。
④不急
この不急は、「あったらいいな(Nice to Have)」の商材を販売するときの最大の失注理由です。
「おたくはドコの誰かも分かって、商品も良さそうで、使えそうだ。
でも今じゃない」
世の中の営業の最大のテーマとして扱っても良いであろう、
“でも、今じゃないとダメなの?”
です。
つまり、今買う理由をが必要なのです。
今買う理由というのはカッコよくいうと“コンペリングイベント”といい、何かしらの差し迫った状況が必要となります。
例えば、ハードの保守切れとか、営業のエースが辞めてしまうとか、利益が出たから消化しておきたいとか、そういうのがコンペリングです。
しかし、コンペリングをお客様任せにしていては、いつまで経っても待ちのスタンスです。
ですので、コンペリングを積極的に営業が作りに行かなくてはなりません。
具体的にはこんな感じです。
「展示会に出展するとなれば、大量の名刺情報を入手しますよね?」
↓
「何件くらいです?1000件ですか?」
↓
「では、その1000件に当日中にお礼メールって送る体制はありますか?」
↓
「人力でできそうですか?」
↓
「難しいですよね。実は、展示会後って、一番最初に連絡してきたところから買うって会社が6割らしいんですけど、このままだともったいないかもしれませんよ?」
このように、積極的に作りにいくのです。
詳細は別noteにも書いているのでぜひ読んでください。
猫かわいい。
そして、このコンペリングイベントですが、どうにもこうにも作れない場合の最後の手段が、期限付きのディスカウントになります。
この期限付きのディスカウントを武器にゴリッとクロージングしてくる営業も多いです。
ただ、不信、不要、不適の壁を超えずにディスカウントの話をする営業は絶対にNGです。
裏を返せば、不信、不要、不適を超えていればディスカウントの話をするのは交渉の範囲内だと思っております。
営業側としてはもちろん、購買側の方も「期限付きのディスカウント」に惑わされることなく、しっかりと検討が出来ているか確認いただければと思います。
そして最後に、この不急の段階で期限付きのみでゴリゴリとアプローチをすると何が起きるか。
この図の通り、また不信に戻ります。
期限付きディスカウントを使っていいタイミングはしっかり見極めましょう。
私が期限付きディスカウントを使っていいと思っている条件は2つあって、
・決裁者もしくはChampionに直接
・すでに価値を感じており、導入後のイメージもお客様が出来ている。
です。
まとめ
じつは、この4つの不にはもう一つポイントがあります。
・不信
→数字や事実に基づいた、丁寧な説明
→論理的
・不要
→感情にアプローチする情熱的な説明
→パッション
・不適
→とにかく丁寧な説明
→論理的
・不急
→今契約するメリットを熱量高く説明
→パッション
という、論理的とパッションのサンドイッチになっております。
どんな冷静で論理的な方でもパッションを持っていないといけませんし、
どんなにパッションを持っていても論理的な考えは必要です。
もっと言えば、購買側は、論理だけでもなく、パッションだけでもなく、双方から正しく判断いただけばいいなと思っております。
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