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126 ハイユニ


はじめに

私は、大学受験まで筆記用具は鉛筆しか使っていませんでした。シャーペンでも鉛筆でも学習を進める上ではあまり関係ないように思う人もいるでしょうが、書き具合からしても進み具合からしても断然私は鉛筆派です。
なかでも鉛筆にはこだわりがあり、少し高いですが「ハイユニ」という鉛筆をお勧めします。三菱鉛筆の名作鉛筆「ハイユニ」の良さは、他の鉛筆を使った時に明らかにその書きやすさに気づくほど違います。
日本の鉛筆のなかでこれほどまでに滑るように字が書ける鉛筆はないでしょう。今日は、子どもたちの学習を支える筆記用具の中でも特によく使う鉛筆について少しお話してみたいと思います。

ハイユニ

一般的に鉛筆の芯は黒鉛と粘土を配合して作られています。ハイユニは、この黒鉛と粘土の不純物が非常に少ないのです。そのため、微粒で均一に配合されています。均一に配合されているので書き心地も滑らかで、折れにくいため、ハードな学習にも最適です。
むらがないので、色の濃さも均一で筆圧をそれほどかけなくてもしっかり書けます。折れませんし、無駄に力を入れずに済むので、芯の減りも遅く、指も疲れにくく長時間学習するには最適です。
テストで速さを必要とする時には、滑るように文字が書けますし、大量に漢字を練習する時には指への負担も軽減できるこの鉛筆は「王様の鉛筆」と言えます。見た目にも金の王冠が鉛筆の頭に飾られているようなデザインで、ボディーも深い茶色で筆箱にこの鉛筆が3本入っていればそれだけでテストに向かう準備は万全といったまさに、威風堂々としたものとなります。

母親からの贈り物

私が、中学2年生の頃のことです。数学で迷子になりテストの点数が落ち込んだ頃のことです。学年の順位が一桁から二桁に落ちこみ、ひどく気もちがさがっていたことがありました。
毎晩遅くまで、部活が終わると部屋にこもり、それこそ朝日が出るころまで勉強していた時のことです。みかねた母親が、高そうなケースに入った1ダースの鉛筆をプレゼントしてくれました。紙袋から出して母親は手渡しながらこう言いました。
「勉強は教えられないけど、これ使って頑張んな。」「それと、遅くとも2時には寝なよ無理がたたるからね。」と言って落ち込んでいる私に手渡してくれました。
私は、すぐに鉛筆箱のなかにはっていた緑のトンボのマークの付いた鉛筆を机の上の筆立てに入れて、ケースから3本の神々しさがあるハイユニの鉛筆を取り出し、丁寧に削り鉛筆箱に入れ、その日は部屋の電気を消しました。

ハイユニ

私が、大学の受験を終えた時、筆箱には3本の短くなったハイユニが銀色のキャップをかぶって入っていました。その3本があの時もらった1ダースの最期の3本でした。
当時、短い鉛筆を銀色の少し太めの筒のようなものにはめ込んで最後まで使う筆記用具がありました。私は、それを使って最後の最後まで使い切ると次の新しい鉛筆を出しては使い切りました。一本の鉛筆を使い切るには相当の時間がかかります。ハイユニは他の鉛筆以上に長持ちしますのでかなりハードに学習しても長持ちしました。

感謝

受験も終わり、合否発表の日のことです。夕方まで高校の授業を受け、帰宅する道中、自宅に届いている封筒の中身がどうであれ親にお礼を言うことだけは忘れないようにと心に決めていました。
家の通りが見える最後の曲がり角をゆっくり曲がると、しんしんと降る雪の中、母親が頭に雪をかぶって待っているのが見えました。手には封筒があり、合格通知を頭上で左右に振りながらむかえ入れてくれていました。
母親のその姿を見た時、ふとあの時にハイユニを1ダースもらった時のことを思い出しました。たかが鉛筆されど鉛筆だったのだと思います。私が母親にしてもらったことは、長い時間をかけて私の学びを支えてくれたものでした。学ぶために様々な道具や機会を利用しますが、私は自分が学びやすい鉛筆に出会えたことに今も感謝しています。


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