見出し画像

484 生徒指導担当教員


はじめに

文部科学省が打ち出した新たな教育行政が2025年から順次実行されていきます。それが、全公立中学校に不登校やいじめの対応に専任の教師を配置するというものです。
この教員のことを「生徒指導担当教員」と呼びます。今日の教育コラムではこの政策について少しお話をしてみたいと思います。

事実は深刻さを増している

日本の教育が世界と違う意味で深刻な問題をかかえているとすれば、いじめや不登校の問題を教師が自分の責任だと感じて解決しようと努めている点かもしれません。
2つの問題を切り離して少し話してみたいと思います。まずは、いじめの問題です。いじめの防止や調査など現場の教師は、警察のような仕事をします。他の国々の中にはいじめというものは犯罪であるまたは悪質な行為であるため警察に相談するまたは、適切な医療機関や相談機関に対応を任すなど、初動の時点で外部機関の力を介入させます。第三者の介入をいち早く取り入れることで客観的な視点が入るわけです。教育的配慮などという言葉は、その後で司法や専門機関が判断の材料とするものなわけです。
つまり、いくつかの教師の業務の中でも教科や感性などを授業で伝える学ばせるということに重きを置いているわけです。
一方、「人格の形成」という言葉に象徴されるように道徳観や人権意識などを育てることもまた教育なわけです。しかし、いじめ問題に対応する場面ですら育てるという意識を強く働かせるため、いじめを犯罪行為、または重大な問題行動として処理できないのです。あえて処理といったのは、警察や弁護士などの介入につなげるという行為を想定して処理といっています。
被害者を救済する観点が、加害者も救うという理念により薄らいでいると言ってもいいかもしれません。被害者を救済することが遅れることで尊い命が毎年失われています。現在日本では、不登校の中学生はこの10年で2倍になり20万人に至っています。また、いじめの認知件数もコロナ禍後に再び増加しています。

不登校の現状

2025年以降、全国に約9000校ある公立中学に対して、文科省は生徒指導教員を順次配置していきます。来年には約1400人の生徒指導教員を確保しようと考えています。
では、生徒指導教員はなにをするのでしょうか。この教員は、授業を受け持ちません。また、クラス担任も受け持ちません。
業務は、不登校の解消やいじめ防止に向けた業務を専任で行うのです。それだけ、不登校の生徒が急増しているのです。ここ20年で不登校の数は毎年増加してきています。また、一人の児童の不登校の期間も長期化している傾向もあります。
クラスに一定は、不登校の生徒がいる状況が全国の学校で慢性的になっているのです。現状は、担任が中心に対応をしている学校が大半でしょう。
そこで、この生徒指導教員は、不登校生徒への対応を一手に引き受け、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに不登校の生徒をつなぐ役割を担います。学校や家庭での状況を把握したり、担任や管理職と情報を共有したりする橋渡しをしたり、必要な書類を作ったりします。
不登校の要因は様々ですから、生活面や学習面などで必要な支援を展開していくことになるはずです。また、特別に教室を分けて登校してきた生徒に対して個別の授業をしたりする場合もあるでしょう。その場合は、授業を受けていないわけですから、それぞれの進度に合わせた学習支援を準備していきます。これは、不登校生徒の数が学校によっては、10人なのか20人なのかというさもあるわけですし、原因も様々ですから一概に人数で大変かどうかは問えません。しかし、かなり偏りのある状況にはなるはずです。

解決できない

2022年度時点の文科省の調査では、不登校の中学生は前年度比3万人増え約20万人となっています。中学校のいじめの認知件数も、2020年度の8万件から11万件へと急増しています。
今回の政策のほかに私立学校への補助金についても今年度の予算額から3%増額する方向が示されています。公立教員の処遇改善に伴い私立に通う多くの子どもたちの教育に携わる教師たちにも光が当たるはずです。
私立の場合、こうした補助金の増額分を適切に職員の給与に反映させない法人があることが懸念されますのでその点は、行政指導をしっかり何の目的の増額なのかを明確にして入れてほしいと感じます。
いずれにしても、教員の負担軽減や処遇改善は、現在の劣悪な状況とそれに気づいた若者の教職離れへの対応になります。つまり不登校児童生徒への対応とは関係性はあっても別の次元だと私は感じます。

根本的に

例えば、国公立の通信制の小中高大を整備し、不登校の児童生徒学生の根本的な教育の機会を保証するなどといった、既存の学校の在り方を超えた対策が必要だと考えています。
学びにアクセスする機会を対面の今のリアルに通う学校にこだわるあまり、問題が深刻化していることは、ここまでくると誰もが感じる点なのではないでしょうか。昭和スタイルの今の学校というものにこだわる理由はどこにあるのでしょうか。コンテンツやソフトが少しばかり今風になったというのはあまりに貧弱な変化だと言えるでしょう。

いいなと思ったら応援しよう!