何でも聞くLINE相談「むすびめ」にはどんな悩みが届くのか?
「毎日死にたい気持ちになります」
「親から暴力を受けています」
「クラスの好きな子と親しくなりたいです」
「自分の子どもといることがしんどいです」
「病気で仕事に復帰できず来月の家賃が払えません」
これらは、LINE相談「むすびめ」に届くメッセージ例の一部です。毎日あらゆる年齢層の方々から様々な言葉が送られてきます。
少し並べただけでも、「むすびめ」がどんな悩みも受け付けていることがわかるのではないかと思います。
先述の
「クラスの好きな子と親しくなりたいです」
という相談。
死にたい、暴力を受けている、家賃が払えない、という言葉に囲まれると、一見とても穏やかで可愛らしい質問に見えるかもしれません。実際、身の危険がある状況や生活困窮といった緊急性の高い相談への対応を考えている時とはまた違う空気感が相談員の中に流れることも事実です。
しかし、一見「深刻そう」とは捉えにくい恋愛の話や素朴な質問から始まったやりとりの先で、過去に虐待を受けていたことや幼い頃から突如襲われる希死念慮に苦しんでいることが打ち明けられたりします。
この、やりとりを進めるほどに当初は想像もしていなかった話が出てくるところが、「なんでも聞かせてください」と窓口を最大限広く開いた「むすびめ」の一つの特徴ではないかと思います。
名づけられない悩みたち
「むすびめ」は利用を開始するとき、どのようなカテゴリーでの相談を希望するのかを円グラフにあるような選択肢から選んでもらっています。
相談者に若者が多いことも影響し、「勉強のこと・進路のこと」というカテゴリーが全体の4割を、10代の相談者に限ると半数以上を占めています。
では相談が、勉強に関する悩みや受験や就職など進路決定に関する範囲内で進められているのかというと、やはり必ずしもそうではありません。むしろ、このカテゴリー選択は何を「入り口」として入ってきたかを知るための一データに過ぎません。
何らかの理由で学校を辞め、どこにも居場所がなく孤立している。
進学を機に暴力的な親から離れようと思っている。
理由はわからないがただただしんどく、家出や自傷行為を繰り返している。
「勉強・進路のこと」がクリックされた画面の向こう側には、それぞれに異なる状況があります。
1人の人の「どうしよう」という状況は、単体で直接的な要素によってのみ生み出されるのではなく、あらゆる条件、状況が複雑に重なり合い生まれています。
「ただ聞いてほしいんです」
「むすびめ」にどのようなことを求めたいか尋ねると、何もしなくていいのでただ話を聞いてほしい、という返答を受け取ることがよくあります。
ただ聞いてほしかっただけなのに、相談すると結果的になぜか怒られている、諭されている。そうした経験をしたことのある人は、少なくないのではないでしょうか。
私たちは相談内容の緊急性を測ることはあっても、深刻度にレベルをつけることはありません。それは冒頭にあるように、今言語化されていることだけがその人が抱えている困りごとや悩みの中心とは限らないからです。
どんな悩みも丁寧に聞き、抱えている感情や置かれている状況から、相談者がありたい状態とは何なのか、その輪郭を捉えようとします。
相談者の方の中には、「どうしたらよいのか教えてほしい」と言う人もいますし、こちらが行政や専門機関のサポートにつなげ、適切な支援を受けることを目指す場合ももちろん多くあります。
そうしたケースでも、やはりスタートは徹底して「聞くこと」にあります。
保育士、教師、看護師、栄養士、児童相談所職員、社会福祉士、キャリアカウンセラー、様々なバックグラウンドを有した相談員が、まず寄り添う・評価しないというスタンスで専門性を活かした視点から耳を傾けます。
「生きづらい」をひとまず言葉にする場所
聞いてほしい、という状況は、相手が聞き自分が伝える状態であることを求めるのと同時に、伝えようとする行為の中で、頭の中にあるものを言葉にし、自分自身に説明をつけようとする機会を持つことでもあります。
話していたら自分が何に苦しんでいたのか少しずつわかるようになった。
すっきりとまではいかなくとも落ち着いた。
そんな風に「適切に」聞ける相手が存在すれば、自分で起こした言葉によって自分自身への理解を深める様子を目撃することがあります。
居場所がない。それはもちろん、物理的にいられる場所がないことも指しますが、自分のことを安心して話せる場所、人の不在のことなのかもしれません。
まず言葉を発してみること。その後で、何に困っていたのかわかればいい。「なんでも聞かせてください」と言ってみる理由はそんなところにあります。
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「死にたい」気持ちをタブーにせず、考えてみる
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