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ドラマって自分の気持を投影してくれることがある(NHK朝ドラにて)

最近、めっきりドラマを見ていなかった。

新しいドラマが始まるとなると、キャスティングや、ストーリー性で見るかどうかを決めるけど、もう何年ドラマを見ていないのだろう。


そんな私が、最近、気になったドラマがあった。

NHKの朝ドラ「虎に翼」。

仕事の関係で、めったに朝ドラを目にすることがないけど、雨の日にたまたま目にしたり、最近は台風の関係で家に居ることが多くなり、タイミングがよいと目にするようになった。

とびとびでしか見ていないので、「内容の捉えかた」も不確かなものではないかもしれない。

随分前に見た感じでは、昭和の随分昔に、日本初の女性弁護士が誕生するドラマと捉えていたが、つい最近、久しぶりに見ると、主人公の伊藤沙莉さん演じる寅子が、実子を連れて、岡田将生さん演じる航一の家庭に同居し、「家族のようなもの」として受けいられているのを知って、「昔の時代にも、そのようなことが!」と、少し驚いた。

航一が、早くに妻を亡くしていたり、寅子にもきっと事情があって、ご主人が居ないのだろうから、配偶者が居ないもの同士が一緒になるだなんてことは、考えてみれば昔からあったのかもしれないが、ごく普通の家庭に育った私は想像が足りなかった。


朋一とのどかが、航一の子どもだと理解した時には、「ちょっとお父さん、若すぎちゃうん?」と、くぎ付けに。


そんな寅子と、実子である優未が、家庭の中心で、愛情あふれる明るい雰囲気で、親子でコミュニケーションを取り合うなか、向けられる航一の眼差し。

その眼差しに耐えられないのどかの嫉妬。

「私の家は、賑やかで明るい家じゃない。
別に仲悪くないけれど、静かで、ベタベタしない、干渉しない、
そういう家族なの!
私の知っているお父さんは、仕事第一で、家族との付き合いが下手な人なの。
お祭りも海も行かないし、入学式の写真で子どもと手をつないだり、
散歩に誘ったりしない!」

思わずこぼしたのどかの本音。

のどかの本音を知った父親である航一が、のどかの目線に合わせるようにしゃがみ「何がたべたい?」と、覗き込むようにして聞いたときには涙がぶわぁっと溢れた。


あと、寅子が子供たちのことを思って、「自分は心行くまで『子供』をやらせてもらえたけど、(あなたたちは)その時間がなかったのよね」との台詞にも、自分を重ねて感情が揺さぶったけど、それ以上に、岡田さんが演じる、航一の優しい表情。

いや、あんな若いお父さんはいないけど、あの優しい表情にやられた。


あれだけ優しい表情で、あの口調で、父親にそう言われたら・・・。


膨らませるだけ膨らませた想像と、妄想は止まらなかった。


「私もそんな優しい表情で、あの口調で、父親に言われたかった」50も過ぎて年甲斐もなく思い、泣いた。


のどかは、航一が、寅子や優未と、自分とはなかった関係性を築き上げていくことに、「嫉妬」という気持ちに駆られたのだろうけど、私の家庭も静かだった。


だけど、のどかの「過去の家庭」ともちがって、両親が喧嘩をするわけではないけど決して仲が良かったわけではなかったし、会話がなくて冷たい空気が走っていた。

母は私への干渉が止まらなくて、いつも金切り声を上げてたけど、父は家庭のことに無関心だった。

無関心というより、不器用すぎるくらいに不器用な人で、仕事をすることだけに一生懸命だった。


戦争に身を投じて家庭を守った自分の父親に、自分を重ね合わせ、企業戦士になったのかもしれない。

父親の居ない家庭に育ち、自分自身がどう家庭に立ち位置を構えながら、妻や子供たちと接したらよいのか、分からなかったのかもしれない。


とにかく無口な人だった。


勤勉で我慢強い人だったが、やっぱし、優しい「言葉」が欲しかった。


そんな自分の気持ちを投影してくれるのが、ドラマの良いところだと、再認識したひと時だった。
本音は、あまり思い出したくないことだったけど。


勤勉に働く父と、専業主婦の母のもとで、ごく普通の家庭で生まれ育った私は、「note」の世界でいろんな人生を歩んでこられている方を知って、ますます恵まれていたと思うようになった。

だけど、未熟だったせいもあって、若い頃は、随分とそんな家庭のことを、特に母のことを恨み妬んだし、父のことを父として役割不足だったと思ったものだ。


物理的に距離をとり、結婚して、人生を切り拓いてからは、生まれ育った家族のことを。父のことを。母のことを、完全に吹っ切ってきったと思ってきたけど、自分の本心を見透かされたように、ドラマの場面で感情が動いたので、驚いた。


もう50も過ぎていい年なのに、情けない気もした。
父は、もう3年前に亡くなっているのに。


娘には、どうか届いてほしいと、今でも優しい言葉をかけ続けているけど、ドラマのこういう場面で、私と同じ思いをして感情が動かされることがないといいなと信じている。


息子は、しょっちゅう会話をしているから大丈夫かな。


ちなみに、この記事を書きあげてから、少し寅子の元夫のことを調べてみると、出征されていたことが分かった。
祖母と同じ戦争未亡人になられたと、理解したが、10年ほど前に亡くなった、女手一つで父を育て上げた祖母に、改めて思いを馳せることができたと同時に、戦争で夫を亡くした寅子や祖母の気持ちを考えると、想像するに耐えない。

あとがき


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