「誕生日おめでとう」と子に言えることは、とても幸せなことかもしれない。
昨日、柿採りに行く直前に、久しぶりに家の固定電話がなった。
義父が亡くなってからは、固定電話がなることは、滅多にない。
あるとすれば、セールス位なものだ。
珍しい時間帯に、かかってくることもあるものだなと思って、電話をとった。
もしもし
kakiemon?
元気にしてる?
誕生日おめでとう。
あ・・・あぁ・・・
元気にしてるんやったらええねんけどな。
お母さんも、げんき?
元気やで。
〇〇くんも、〇〇ちゃんも元気にしてる?
う・・・うん。
忙しい時にごめんな。
そしたら、またな。
それだけ、聞けたらいいなと思ってな。
ありがとう。
母から、誕生日に電話がかかってきたのは、随分久しぶりだった。
私が嫁いできて、誕生日だけは、電話をよこしてくる母に、若い頃は嫌悪感しかなかった。
その、誕生日だけは、電話をよこしてくる習慣もなくなって久しい。
今回は、久しぶりだった。
それでも、もともと相性が悪いせいがあるのだろう。
声が母と分かると、反射的に、イラっときた。
だけど、必死に抑えて、ひと言ふた言、言葉を交わすのが精一杯だった。
母も、長く言葉を交わすのは、私たちのあいだでは、ご法度だと理解して、短めに切り上げてくれたのだろう。
それで正解。
あとから、じんわりきた。
あと少し。あと少し、長生きしてね。
子供たちを連れて、ぜったい会いに行くから。
言えなかったけど、それも正解。
必要以上に、言葉を交わすと、何かしら、もつれてくる。
だけど、年を重ねるごとに、北朝鮮による拉致の被害者、横田めぐみさんのことが気になる。
若い頃に、横田めぐみさんと、私の誕生日がおなじだということを、新聞で知った。
はじめは、「拉致」だの「被害者」だの意味が分からなかったけど、ただ、私と同じ誕生日の方なんだと。
そして、毎年のように、私の誕生日に、お母さまの早紀江さんが、娘のめぐみさんに、向けたことばを、新聞に寄せていらっしゃる。
どうか、娘に届きますように。と。
その思いが届く可能性が、ほとんどないということも、年を重ねるごとに、分かってきた。
そのお母さまのお気持ちを考えると、心がギューッとなる。
めぐみさんは、この誕生日で還暦になられるという。
「60歳のイメージが湧かないし、想像がつかないです」と、めぐみさんのことを、仰っていたお母さま。
拉致問題が、早く解決して、母子、姉弟早く会うことが、出来ることを、願わざるを得ない。
私も、母との関係を見直さなきゃなと、考えさせられる。
母も、もしかして、横田めぐみさんとお母様のことを、私の誕生日ごとに、新聞などで見てきて、思うことがあったのだろうか。
ふと、そう思った。
「お誕生日、おめでとう」
子に、直接言えることは、ほんと、幸せなことだ。
1年、1ねん、「還暦」に近づくなぁと思っていたら、新聞で、めぐみさんが、還暦になられたことを、知った。
めぐみさん、還暦の誕生日、おめでとうございます!
私も、めぐみさんの、7年あとを追いかけて、還暦になります。
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