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「親も人間、リアルな子育てでいい」著者メッセージ公開 #ほめ方叱り方 #ディスカヴァー
本日、8/28のノンストップにて書籍『自分でできる子に育つほめ方叱り方』をご紹介いただきました!
そこで、本書の「おわりに」より著者メッセージを無料公開いたします。
「ダメでしょ!」「早くしなさい!」「どうしてそんなことするの!?」
なかなか言うことを聞いてくれない子どもに、ついそう叱ってしまうこと、親ならだれでも経験することです。でも、ほんとうに自分で考え、行動していく子どもに育てるためには、それでは逆効果。
どうすれば、これからの時代を生き抜く「自分でできる子」に育つのか。その効果的な声かけを、モンテッソーリやレッジョ・エミリアなどのオルタナティブ教育の観点と最新研究のエビデンスに基づいて紹介しているのが、本書です。
もちろん、親も叱りすぎはよくないとわかっている。だから、1日の終わりに反省したり、自分を責めたりしてしまいます。
本書の感想で多かったのが、「自分の子育てでいいのか不安だったので読みました」「叱りながら罪悪感でいっぱいでした」という声です。
そんな感想の中でも特に目立つのが、「“おわりに”の著者のメッセージに救われました」「感動しました」という声。「親も人間。リアルな子育てでいい」という、著者の温かいメッセージをぜひご一読ください。
無理しない子育てを!
現代の親、特に母親にとって、社会が期待する「完璧な母親像」というのは大きなプレッシャーです。
母乳をあげるべき、料理をするべき、キャラ弁をつくるべき、送り迎えをするべき、手づくりするべき、家事をするべき、家族の面倒を見るべき、家にいるべき、産休をとるべきと、例をあげればきりがありません。
この「母親は~しなければいけない」という無言の社会的プレッシャーは、母親の罪悪感や劣等感、ストレス増加、そして極度の疲労に大きく関係しています。
これは多大な期待をされている場合、人は失敗やミスに対する恐怖心を煽られ、不安に感じることが多くなるからです。
「理想の母親像」のプレッシャーと罪悪感
「理想の母親像」のような社会的規範を守れば守るほど社会的に認知され、逆に逆らえば逆らうほど社会的に批判されるという構造があります。
当然、いわゆる「理想の母親像」に到達していないと自分で感じている場合、罪悪感を覚えるでしょう。
そして同僚や家族などの周囲から心ない声をかけられるたびに、自分は理想からほど遠いダメな母親なんだという思いが強まってしまいます。
残念ながら、「ふつう」に「みんなと同じ」ようにふるまうべきだという考え方は、自己の社会におけるアイデンティティを保つために日本では根強く残っています。
言うまでもなく、もうすでに十分がんばっているお母さんたちにとって、この「理想像」のようにというのは苦しいものなのです。
親自身が幸せであることが大切
異国文化間の交流や人材の流通が盛んになり、日本も集団主義から、自分のゴール・思考・感情を主体とする個人主義に徐々に移行しつつあります。
個性や多様性を尊重する考え方が多様性を尊重する考え方が受け入れられつつある一方で、「理想の母親像」などといった社会的規範も根強く残っているのも日本の現状です。
さらに多くの日本人が、個人主義は人間関係を壊す可能性があるという見方をしているのも事実であり、個人尊重と社会的規範の間に摩擦が生じているのです。
もちろん、「こうであるべき」という同調圧力は母親に大きなストレスを生みだします。
そして、子どもに対するイメージが大人の感情や行動の根源であると同様、自分自身が抱く「親に対するイメージ(見方)」も自分への感情に大きな影響を与えます。
つまり、「母親はこうあるべき」という社会の親に対するイメージを自分自身が信じれば信じるほど、そうでない自分とのギャップに苦しんでしまうことになります。
たとえば、「母親は子どもと一緒の時間を過ごすべき」というイメージが自分の中で強ければ強いほど、一緒の時間を過ごせない自分に苛立ちや焦りを覚えるでしょう。
実際に仕事と子育ての両立で焦ったり罪悪感を感じたり、あるいはストレスを感じている母親と一緒に時間を過ごすほうが、子どもの心にネガティブな影響があることがわかっています。
つまり、母親自身の心の満足度が高い状態であることが非常に大切だということです。
親自身が幸せであれば、子どもに与えられることも増えるでしょう。
「完璧でなくてもいい」「お惣菜をうまく使って料理をするのもあり(手づくりでなくてもよい)」「失敗をすることもある」と自身が抱く親に対するイメージを変えるように意識してみれば、自分にもっと優しくできるかもしれません。
そもそも全力でがんばっているのですから、「手抜き」なわけはないのです。そして一人でがんばる必要もないのです!
時間の長さよりも質
実際に、子どもとゆっくり一緒の時間が過ごせていないと罪悪感を覚えたことはありますか?
母親との時間が将来のために不可欠であるとの社会的な思い込みも災いして、子どもに対して後ろめたい、申し訳ないという気もちをもっているお母さんは多いものです。
実際、共働きの場合、父親に比べて母親のほうが圧倒的に自分の仕事が家庭や子どもに与える影響について罪悪感を覚える確率が高いことも明らかになっています。
親が子どもと一緒に時間を過ごすことは親子関係にとってもちろん大事ですが、じつは時間の長さよりも質のほうが大事であることがわかっています。
3~11歳の子どもたちが両親と過ごす時間の長さは子どもの行動、感情の発達、学習力に大きな影響がない一方、一緒に過ごす時間が短くとも質の高いアクティビティ(会話のやりとりをする、本を一緒に読む、スポーツや工作をするなど)を一緒にした場合、子どもたちの社会性や自己肯定感、さらに忍耐力がより高くなることがわかっています。
逆に一緒に過ごす時間が長かったとしても、テレビをただ見る、あるいはダラダラとただ一緒に過ごした場合、子どもたちの社会性や自己肯定感が伸びないなど、成長にネガティブな影響を及ぼす可能性がより高いことも明らかになっています。
つまり、一緒に過ごす時間の長さよりも、いかに質の高い時間を確保し、中身のある時間を一緒に過ごすかということが大事なのです。
親も人間。全部完璧にやろうとしなくていい
新しい命を授かり、親になるということは尊い奇跡であり、人生においての大きなイベントです。
子どもをもつことでいままでに経験したことのない喜びや幸せを経験するとともに、子育てのイライラや不安を感じるのも現実でしょう。
仕事との両立、経済的問題、社会制度の欠落など、みんなにいろいろな事情があります。完璧な親なんてものも存在しません。
親も人間です。
一人の人間だった個人が、子どもという命に恵まれた結果、「親」になっただけで、一晩でいままでの価値観や考え方、欠点や習慣がドラマチックに変わるわけはありません。
感情に振り回されるときもあるでしょう。
子どもへの気もちが自分の心の余裕によって変わってしまうのも現実でしょう。
書籍『自分でできる子に育つほめ方叱り方』で「ほめる」「叱る」などコミュニケーションにおいてさまざまなポイントを紹介してきました。
誰のための子育てなのかを考え、大人の都合を押し付けずに子どもと接することはとても大切です。
ただ、全部やろうとしなくてよいのです。
親自身の中に湧きでる感情を押し殺して仏のように子どもの行動を受け入れる、あるいは受け入れるふりをする必要はありません。
毎回、毎秒、無条件な子育てができる人なんていません。
たまに人中心に子どもをおおげさにほめたり、イライラして叱ったところで、子どもがダメになるわけではないので安心してください。
子育てに絶対の正解はありません。
書籍『自分でできる子に育つほめ方叱り方』も一学者が好きで熱中して研究した内容を読者のみなさんと共有させてもらったに過ぎません。
少しでもみなさんの気づきに貢献できたなら、考えるきっかけになれたならそれで十分です。
罪悪感を覚えたり、ダメだったと一日の終わりに反省することは人間誰でもあると思います。
反省・成長を繰り返しながら、自分にできることをできる範囲でやる、ふに落ちたことをやってみる、そして我が子をたくさん愛してあげる、そんなリアルな子育てでいいのだと私は思います。
2020年春 島村華子
※『自分でできる子に育つほめ方叱り方』P186~おわりに より、抜粋
■著者:島村華子
オックスフォード大学 修士・博士課程修了(児童発達学)。モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育研究者 。
上智大学卒業後、カナダのバンクーバーに渡りモンテッソーリ国際協会(AMI)の教員資格免許を取得。カナダのモンテッソーリ幼稚園での教員生活を経て、 オックスフォード大学にて児童発達学の修士、博士課程修了。現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わる。 専門分野は動機理論、実行機能、社会性と情動の学習、幼児教育の質評価、モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育法。