Diversity at Gucci 〜グッチが極めた多様性〜
こんにちは!ディスカヴァーでWEBマーケティングを担当している磯部です。
広告代理店やマーケティング会社を経て、2020年1月にディスカヴァーに中途入社し、ちょうど丸2年が経ちました。
現在は主に「ディスカヴァーebook選書」という電子書籍レーベルを担当しています。
先日、チームメンバーとの雑談の中で、『多様性の科学』の帯に出ている「なぜグッチは成功しプラダは失敗したのか」というトピックについて、ファッション好きな磯部がもう少し掘り下げては?ということで、今回noteでグッチについて語らせていただきます!
僕は昔から洋服に興味があり、母親のクローゼットで昔着ていた洋服を漁って着てみたり、バイトしては洋服代に注ぎ込んだり。
次第にパリコレのような海外コレクションもチェックするようになりました。(見始めたころは、まだジョン・ガリアーノ氏がDiorを担当していました)
たんにファッションが好きで見はじめたコレクションですが、その後マーケティングの仕事をするようになって、発表されたデザインが消費者の元に届くまでを意識して見るようになりました。
舞台に登場した印象的でアーティスティックなデザインが、少しマイルドになり、プロモーション展開が行われ、ファッション誌で取り上げられるようになって、さらに実用性が加えられ、店頭で私たちが実物を手に取れるようになるまでに約半年から1年ほどかかります。
(この間に、さまざまなマーケティング調査やPR戦略が行われ、ファッションビジネスは熾烈を極めます)
「あ!これやっぱり流行った!!」と半年前の予測と答え合わせをするのがマーケターとしては面白いところです。
そろそろ2022-23のAW(秋冬)コレクションが始まる季節。
ワクワクする一方、海外コレクションのリアルタイム鑑賞のために時差で私生活が荒れるのが心配で…(笑)
さて、そんなファッション好きの僕が、『多様性の科学』の一例として紹介されている「なぜグッチは成功したのか?」について深堀したいと思います。
グッチで何が起こったのか?
グッチ(GUCCI)は、グッチオ・グッチ氏が1921年に起業し、昨年100周年を迎えたイタリアの老舗ファッションブランドです。
長い歴史を持つ企業には、独自のやり方、古くからの慣習、ベテラン社員が多く存在するものですが、それは時として、多様性を失い新たな発見を妨げることになります。
書籍で紹介されている通り、グッチは「若者とベテランのコミュニケーションを定期的に行う」ことで、凝り固まった考えにテコ入れし、新しい文化やテクノロジーをいち早く取り込むことに成功しました。
さらに、グッチの成功の理由には2015年に、現在のクリエイティブディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレ氏が就任したことも大きくかかわっています。
彼は、最初に手掛けたコレクションで「The Contemporary is the Untimely(コンテンポラリーは反時代的である)」をテーマに掲げ、それまでのセクシーで大人っぽいグッチからガラリとイメージを変えました。
今までと違う中性的なデザインやウィメンズコレクションに男性モデルが、メンズコレクションに女性モデルが登場するなど、ジェンダーの枠にとらわれない新たなグッチのスタイルに、僕も衝撃を受けたのを覚えています。
この新生グッチは、当時CEOになったばかりのマルコ・ビッザーリ氏の経営戦略によるものです。
彼は、当時まだ無名だったミケーレ氏をクリエイティブディレクターに抜擢し、ミケーレ氏の生み出す新しいグッチをコレクションとして外に発信するだけでなく、社内にもカルチャーとして浸透させました。
こうしたピッザーリ氏の革新的な施策が、ベテランと若手の壁を越えた、ボトムアップの社内コミュニケーションへとつながっていたのでしょう。
チャレンジを恐れない新生グッチに、今では僕も「次はどんなことをするんだろう!?」といつもワクワクさせられます。
グッチのデジタル戦略
同時期の売上でプラダに差をつける大きな要因となったのはデジタル戦略です。グッチのデジタル戦略について、もう少し詳しく紹介したいと思います。
それまで、ほとんどリアルのみで成り立っていた高級ブランドの顧客体験を、グッチは、オンラインでも再現することを目指します。eコマースを充実させ、電話やメールでの手厚いカスタマーサポートによって、店頭に負けない接客を受けられる環境を整えました。
このコロナ禍においても、グッチではオンラインチャットをいち早くとりいれていたと記憶してます。
さらに、ソーシャルメディアを意識したコレクションやキャンペーンの展開を行い、若い世代の注目を集めることにも成功しました。
ここ数年グッチはブランドの認知を高める施策を数多く行っています。
たとえば、2016年アメリカ最大のスポーツイベント「スーパーボウル」でレディー・ガガが国家斉唱の際に身につけていた真っ赤なスーツと星条旗をモチーフにしたシューズは、いずれもグッチのもの。
2018年のエルトン・ジョン「生涯最後のツアー」では、全てのステージ衣装をグッチが手がけたことでも話題になりました。
大衆の目にふれる文化とブランドを掛け合わせ、注目を集めることで、ソーシャルメディアでも「グッチ(GUCCI)」というキーワードが頻繁に浮上するようになります。
あの有名人が着ているブランドはどこ?→投稿
あの人の衣装素敵!→投稿
私も欲しい!着たい!→投稿
同じものを買いました!→投稿
このUGC的な動きも売上を活性化させた要因のひとつといえます。
このソーシャルメディア戦略は著名人にとどまらず、イラストレーターやキャラクター、多ジャンルのブランドとのコラボレーションにも広がっています。
グッチは #GucciGram と題し、有名無名に関わらず、多数のコラボレーションしたアート作品を発表しています。なんと、その数150!
#GucciGramのハッシュタグを付いた投稿は5万件にものぼります。(2022年1月現在)
ブランド名のハッシュタグでも他のハイブランドと比較すると、
#Chanel:7,091万
#Gucci:6,940万
#Dior:5,341万
#Balenciaga:2,750万
#Prada:4,413万
とシャネル(CHANEL)に次ぐ拡散数の高さを誇っています。
商品化したものには、ディズニーやヒグチユウコ、ドラえもん、The North Face、バレンシアガ、Xboxなどがあり、どれも大きな話題をよびました。(僕もドラえもんのバックが欲しかった)
こうしたコラボレーションや発信数の多さは、ピッザーリ氏がビジネスの再構築を図り、ミケーレ氏が「多様性」を発信し続ける新しいグッチの姿を体現しているのではないでしょうか。
そして、その積極的な取り組みが、単なるポーズではなく本気の姿勢として消費者に受け止められていることが、「グッチの成功」となって表れたのだと僕は考えています。
まだまだ語りたいことはたくさんありますが、今回はこの辺で!(ちょうど映画『ハウス・オブ・グッチ』も公開され、ますますグッチには注目が集まりそうですね)
本書『多様性の科学』では、グッチだけでなく、googleやCIAといった、私たちにとって聞き覚えのある組織の事例を多数取り上げながら、複数の視点で問題を解決する組織へと成長させるヒントを紹介しています。
興味を持っていただければ嬉しいです。
最後までお読みいただきあありがとうございました!