墨で虎を描く。
今年九月から、経験なしで成り行きで墨絵(水墨画)教室の講師を担当しています。以下、「墨絵」と書いたり「水墨画」と書いたりしますが、私の頭の中にある技法は同じものです。「墨の濃淡で和紙に描く絵」。海外ではこの中国で発祥し日本に伝わった墨で描く技法は「sumi-e」という名称で知られていますが、日本国内では「水墨画」と呼ぶ方が一般的なのではないかと思います。
その墨絵教室の前任の先生から後任を依頼されたのは去年の九月。最初は「きちんと習ったこともないのにできませんよ」とお断りしようとしたのですが「KaoRuさんは書道やってるから筆や紙のことは分かるし、絵も描くから大丈夫ですよ」と言っていただき、お引き受けしました。
引き受けたからにはしっかり勉強せい、と思うのですが、忙しさにまぎれて、書道作品を仕上げるついでに落書き、程度の練習をするのみで今年五月まで来てしまい、もう一度お断りモードになってきたのですが。諸事情あり、私がやるしかない流れになり、夏休み中は真面目に練習、それでも上手くならないまま九月に講座が始まりました。
講座開始当初はかなりもたついていたのですが、最近では初級者には自分でお手本を用意するようになりました(経験者にはいろいろな本やネットで見つけたお手本などを用意)。
竹・蘭・梅・菊の四君子を一通りした後、松や椿などを描いていたのですが、今週はいきなり「虎」!もちろん来年の寅年にちなんで、です。日本の年賀状のようなものでチェコでも新年のご挨拶としてPF(ペーエフコ、と読んでください。フランス語のPour féliciter から来ている名称だそうです)を贈る習慣があるので、準備しましょう、ということで。(チェコで干支?と思われるかもしれませんが、日本というエキゾチックな国のエキゾチックな絵画技法を趣味で習いに来る人たちというのは、往々にして、こういうエキゾチックなホロスコープが好きなものです。)
そこで私もお手本を作成すべく挑戦。
まず簡単にこんな構図にしたい、とラフを鉛筆で。
二時間くらいの奮闘ののち仕上がったのがこちら。
「寅年」も書き込んでみましたが、絵描いた後で力尽きていたのか、ヨレヨレです。右隅に写っている中墨のお皿の形が変じゃない?と思われそうですが。ちょうどいいものが手に入らなくて、今のところミニグラタン皿で代用しております…。
19年前、日本を出たときにはまさか自分がこんなにも日本文化にかかわることになるとは思ってもみませんでした。書道を教え始めたときも日本語を教え始めたときも「これは今だけのお仕事だから。自分の専門で一旗あげたらやらなくていい仕事なんだから」なんて生意気なことを考えていましたが、水墨画とはすでに一生の付き合いを感じています。(この程度の虎で?とつっこまれそうですが、精進します、ということで。)
今年はnoteのおかげで、日本がより身近に感じられるようになった年でもありました。直接コメント欄で日本にいる方たちと交流ができて、しかもファンですと言っていたら、ご本人から本を送っていただけた、という体験もしました。
まさにバーチャル世界(note)の物質化です!
自分の応援が直接ご本人に届くというのがこんなに自分の中で喜びを生み出すものなのだ、というのもnoteのおかげで見出せたことです。
noteで応援、と言えば今、目下注目しているのは清世@会いに行く画家さんの1月の展覧会です。
今まで交流もなかったうえに会場にも来れないっていうのに、いきなりチケット買って、何なんコイツ?と清世さんには思われていそうですが、清世さんの存在は私にとっては「いきなり」ではなかったのです。
前述の本をお出しになったnoterさん、つる・るるるさんが清世さんの企画に参加されたおかげか、ここ数ヶ月、清世さんの記事が私のnoteにも「あなたへのおすすめ」としてよく表示されるようになりました。
独特の味わいのある絵を描く人だなあ、noteでもいろいろな企画をしててすごいなあ、と感心していたのですが、いわば傍観している感じでした。「物書きではないから、企画には参加できないし」と思っていたら、とうとう展覧会を開かれるとのこと。これは「応援する」という形で参加できるではないか、とウキウキしてしまいました。展覧会は東京で開催されるそうですが、清世さんは私と同じ愛知県のご出身とのこと、親近感わきまくりです(とはいえ、尾張の方なのかしら。私、三河(しかも半島)出身なのですが。)
私は会場には行けないので、noteのマガジンの更新を堪能しつつ、直接足を運ばれる方たちの感想を楽しみにしている次第です。
今年もまだ二週間ほど残っていますが、早々「2021年のシメ」のような記事になってしまいました。しかし、改めて実り多き一年だったな、と思います。
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