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ゲーム屋人生へのレクイエム 115

役員会で泥棒と呼ばれてキレて途中退席したころのおはなし

「クソな役員会を途中で退席してから2日経った朝に本社の役員からメールが届いたんだ」

「メールには何てあったんですか?」

「責任者としては不適格だから社長を解任する。子会社も閉鎖する。とあった」

「え!?クビになったんですか?」

「そうだ。社員全員クビになった」

「役員会を途中で退席しただけで、そんなにあっさり会社を閉めちゃうんですか?」

「不誠実な対応で、経営を黒字化できる根拠もないって事だったけど、本当の理由は別にあると俺は思った」

「どういうことです?」

「本社は当時いくつもあった本社の利益を食いつぶす赤字の子会社を清算したかったんだと思う。その証拠に北米の子会社に続いて日本の子会社も閉鎖したり売却したりしたからな。

あの時は本社の業績も悪かったから株主の手前放置できないと考えたんだろう。だからあのふざけた役員会は俺がどう対応したとしても最初から結論は決まっていたと思うよ」

「なんだかひどいですね」

「まあ、そんなもんだよ。便利な道具として使えるだけ使って邪魔になったら切り捨てる。ムカつくけど現実だ。受け入れるしかない。

でも、正直クビになって清々したんだよ。本社の幹部クラスとのやり取りが超面倒くさくてさ。慎重に言葉を選んでやり取りしないとちょっとしたことですぐに感情的になる人が多くてね。

幹部同士でも人間関係が複雑に絡み合ってプライドやら妬みやら嫉みやらドロドロしててさ。俺がどっちかの肩を持つような発言をしないようにメッチャ気を使わないといけないから、やりとりに疲れてたんだよ。

俺の部下だった若い連中には失業させて申し訳なかった。けど楽しんで仕事をしてもらったと思うよ。今でもたまに会うけど仕事や会社の悪口を言うやつはいないよ。あの頃は面白かったって言ってくれて救われる思いがしたよ」

「いいメンバーだったんですね」

「うむ。いい奴らだった。もう一度一緒に仕事がしたいと今だに思う」

「それで会社が閉鎖になってどうなったんです?」

「メンバーはそれぞれ全然違う仕事に再就職したよ。俺はしばらくプータローをして毎日釣りに出かけてたよ」

「気楽ですね」

「こういうことは焦っても仕方がない。ちょっと長めのバケーションをもらったようなもんだ。無給だけど。

そんな時に昔一緒に働いていた友人が会社を立ち上げてね。携帯電話のアプリを制作する会社だったんだけど誘われて共同経営者になったんだ」

「また経営者ですね。それでどんなアプリだったんですか?」

「超シンプルなゲームとか、ダウンロード漫画を売ったりしたよ。漫画は俺が書いたストーリーを漫画デザイナーが作画してリリースしたよ」

「売れたんですか?」

「売れたよ。漫画は特に評判が良くて連載になった。漫画は制作費がゲームと比べると安いから儲かった。

経営を続けてしばらくしてまあまあの利益を出すようになった頃に俺は経営権を共同経営者の友人に売って会社を辞めたんだ」

「なんで辞めちゃうんですか?うまくいってるのに」

「面白くなくなったんだ。簡単に儲かる環境が面白くなかった。これまでずっと儲からない会社で一生懸命働いていたから何か違和感があったんだ。漫画の連載であっさり儲かっちゃって、今までゲームの仕事で必死にやってきたのが一体なんだったのかわからなくなったんだ」

「わからないものですね」

「人生とはわからないものだ。こうして俺のゲーム屋人生は終わった」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。ゲームクリエーターはもうやらないんですか?」

「辞めた。ファミコンで育った旧石器人の俺がいつまでもクリエーターしちゃいかんと思った。俺なんかより若くて優秀なクリエーターは星の数ほどいる。その人たちが活躍すればいいって思ったんだ」

「約束はどうなるんですか」

「何の約束?」

「どうすればゲームクリエーターになるか教えてくれるって約束したじゃないですか」

「ああ。そうだったな。単純なことだよ」

「どうすればいいんですか?」

「ゲーム会社の入社試験を受ければいい」

「え?は?それが答えですか?冗談ですよね・・・?」

「いや、マジだよ」

「あり得ない・・・115話もつきあったのに」

続く

フィクションだよ

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