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ゲーム屋人生へのレクイエム 111
オンラインゲームに特化したビジネスに舵を切ったころのおはなし
「順調に進んだオンラインゲームビジネスの準備だったんだけど、マジで面倒なことが起こったんだよ」
「どんな面倒です?」
「それは本社の経理から、事業計画を出せと言われたんだよ」
「あれ?事業計画って無かったんでしたっけ?」
「子会社は非連結だったから事業計画はなかったんだ。覚えているだろう。本社が使った開発費を子会社におっかぶせた話」
「はい。覚えています。本社の業績を良く見せる為に経費を子会社に請求した話ですよね」
「それが突然連結決算にするから事業計画を出せと言われた。そして本社が子会社に請求した開発費がどっしりと未払金として計上されてしまう事になった」
「専務からは責任を問わないって言われてましたよね」
「あの時はそう言われた。この事業計画を出せと言われた時も、帳簿に計上するだけで、ある時払いの催促なしでいいと言われた。それで事業計画を作ったんだけど赤字の計画になった」
「いきなり赤字ですか」
「そりゃそうだ。本社からタイトル供給が絶たれてからは自前で開発から制作販売してたでしょ。タイトルラインナップを揃えるために次々ゲーム開発に投資しなくちゃならないからな。回収までは時間がかかるんだよ」
「その資金はどこから出てくるんですか?」
「本社からの借入金だ。投資を回収したらすぐに返済するんだけど、設立時に背負わされた巨額の開発費の返済は全く進んでいなかったんだ」
「どの位の額だったんです?」
「1億3千万円」
「ひゃー」
「まあ、それで赤字の事業計画を本社に提出したら突き返されたんだ。赤字の事業計画など絶対に承認しないって。けどこれが事実だからしょうがない。初期投資なんだから売り上げの回収が始まるまでは赤字になるって何度も説明したが頑として受け付けなかったんだ」
「それでどうなったんですか?」
「専務に直談判した。これが現実ですって。そしたらメッチャキレられたんだ。赤字の事業計画を認めるなって言ってたのは専務だったんだよ。
何が何でも黒字の事業計画を出せと言われたから黒字の事業計画を出した。絶対に実現不可能ですって付け加えて」
「実現できない計画に意味があるんですか?」
「ないよ。ただ見かけをよくするだけで、結果は赤字になるのは確定している。なんと無駄なことをやっているんだろうと思ったよ。
デタラメの事業計画をとりあえず提出して、深呼吸してからオンラインゲーム事業に集中することにしたんだ」
続く
フィクションです