筋肉は日々、削られている。
先日、筋肉の肥大についてnoteに書いた。
良かったらそちらも合わせて読んでいただきたい。
今回は逆に筋肉が分解されることについて書いていきたい。我々の筋肉は常に【かつお節のように削られ続ける運命】にある。
かつお節はお出汁などで使われるが、我々の筋肉は体内で糖などに利用される。それを糖新生と言いタンパク質を糖に変化させ、異化作用(カタボリズム)という。そしてそのタンパク質が分解されることをMPB(Muscle Protein Breakdown)という。今回はMPBを起こす因子について書いていく。
① 筋トレだけではMPB(分解)が進む。
MPS(筋肉の合成)とMPBのどちらが多いか、つまり差があるか。これで筋肉の増減が決まる。何もしなければMPBにより、筋肉は減少傾向にある。そこに運動や栄養が加わることではじめてMPSが上昇し筋肉は増える。何度も言うがMPSの上昇とMPBの低下が筋肉の維持・増加に重要なのだ。
筋トレや有酸素運動などによりMPSはある程度上昇するが、運動はなんとMPB(分解)も上昇するのだ。そして結果としてMPBの方が上回ってしまう。つまり筋トレだけで「筋肉がついた!」と思っていると大間違いで、その後が大切だ。
プロテインをはじめ食品には【アミノ酸スコア】というものがある。これは必須アミノ酸をがどれだけ含まれているかの指標になる。アミノ酸スコアが100の食品が理想的な構成で、100に近い数値のものほど良質なタンパク質となる。結構多いので気になる人は調べてみてほしい。ちなみにほとんどのプロテインをはじめ、卵などはもちろんアミノ酸スコア100だ。
その必須アミノ酸(EAA)を運動後に摂取することが重要となる。とくにロイシンという成分が重要だ。EAAの中でも最も強力なタンパク質合成作用を有する。これを多く含んだサプリや食事を意識的に摂取することで、運動後のMPBを防いでMPSを上昇させることができるのだ。
② ストレスはもちろんダメ。
ストレスによりコルチゾールというホルモンが出る。これは強力な異化作用があり筋肉を分解へと導く。以前の記事でもコルチゾールについて書いた。
そこにも書いたのだが脳はストレスを感じると血糖値を上昇させて危機を乗り切ろうとする。脳は糖質しかエネルギーにできないから、肝臓や筋肉から糖質を絞り出してエネルギーに変える。それが一時的なら甘いものでも食べて回復するのだが、【慢性ストレス】になり、コルチゾールの分泌が常態化してしまうと筋肉から糖質だけでなく、タンパク質を分解することで糖を作り出してしまう。(糖新生)
こうなると筋肉が分解されるだけでなく、肥満や糖尿病や高血圧など生活習慣病となってしまうのだ。ちなみに長時間の運動もコルチゾールの分泌を助長するので、運動する時間もあまり長くない方がいい。
あたりまえだが喫煙・飲酒・睡眠不足などの生活習慣はMPBが上昇する。
つまりストレスを溜めずに、筋肉にとって余計なものは摂取せず、よく眠ることがMPSを増加させるのだ。
③ やはり加齢はMPBが進む。
これはもうしょうがない。そもそも筋肉に限らず、ほとんどの細胞には新陳代謝がある。古い細胞は捨てられ、新しい細胞が作られる。そしてどこの組織も絶妙なバランスでその新陳代謝が釣り合っているのだが、加齢と共に代謝能が落ち新しい細胞を作り出すことが間に合わない。
特に筋肉ではMPBが加速する。それが「老化による体力の衰え」と言われる。
MPSのために理想的なのは若い時より運動量を増やし、タンパク質量を増やすことだ。しかし中年以降の人はわかると思うが、年々運動量も食べる量も減ってくる。
食べることはサプリの摂取などで補う方法があるとして、運動量を増やすには課題がある。それは関節痛や怪我、腰痛などによる活動の低下だ。実際の臨床では高齢者に可能な運動を積極的に行わせているが、正直MPSを上昇させるには物足りないのが現状だ。
何かいい方法はないだろうか?私はそのような問題を大学院で考えていきたい。