見出し画像

慢性ストレスが、やっぱり良くない。


先日のコルチゾールの話に続き、今日は慢性ストレスについて書こうと思う。
↓コルチゾールについてはこちら↓

【アロスタティック負荷】という言葉を知っているだろうか?主に心理学の分野で使われる言葉になる。
アロスタティック負荷(Allostatic Load;AL)とは周囲の環境に長期的・反復的なストレスにより身体に悪影響を及ぼすとされる状態のことだ。
つまり慢性ストレスによる体の不調を指す
ALとはどんなものか?もっとくわしくみていこう。



① ホメオスタシスとアロスタシス

そもそも語源になっている【アロスタシス】という言葉がある。
ホメオスタシスと似ている考え方だ。ホメオスタシスとは恒常性を意味する。分かりやすいのが体温だ。冬でも夏でも我々の体温はほぼ一定を維持できるシステムが備わっている。いわばホメオスタシスは「固定された安定性」みたいな感じ。

そしてアロスタシスは「変化に応じる安定性」といえる。日本語に直訳すると、「動的適応性」となる。
強いストレスがかかると、コルチゾールやノルアドレナリンなどのホルモンが活性化し、そのストレスに対して血糖値を上げる事で耐えようとしている。
脳は糖質が大好きだ。糖質(エネルギー)があれば、脳はストレスに耐えられる。


脳は糖で元気に



体が血糖値を上げたい時、コルチゾールなどの量は一定ではなくストレスに応じて分泌量が変化し安定性を達成しようとするのだ。この仕組みがアロスタシスだ。
柔軟に難面を切り抜けようとする仕組みが、身体には備わっているのだ。

② アロスタティック負荷(AL)の影響とは?

つまりストレスがかかった際のアロスタシスは正常な反応であるが、それが長期間に及ぶと交感神経が優位になったままの状態となり自律神経失調症などにもつながる。さらに長期間コルチゾールにさらされると高血糖の他にも高血圧や骨粗鬆症、骨格筋萎縮などの悪影響が出てしまう。いわばこれがALの影響だ。

要するに、短期間ストレスであればアロスタシスの反応で問題を解決できる。
しかし長期間(慢性ストレス)はダメ。ALにより身体には徐々に悪影響が出る。
慢性ストレスは精神疾患だけでなく代謝性・内分泌性疾患のほかにも様々な病気に、慢性ストレスは通底している。


街中でイライラしている人、たまにいますよね笑

「しかしそうは言っても、ストレスなんてほとんど長期間じゃないか!」

その通りだ。だから私はその解決方法を研究して論文にしたいのだ。

③ 運動が解決するのでは?

運動が精神面(脳)に良い影響を及ぼすことは有名な話だ。
でもその生理的作用はよくわかっていない。
私は主に筋肉と糖代謝について研究するのだが、おもしろい論文があった。

それは運動により疲労すると、筋肉だけではなく脳も一緒に疲労する。
そして筋肉は失ったエネルギー(糖)を再び補充する。なんと運動をやめて24時間後に筋肉内の糖は基礎レベル以上に回復するという。その際に脳内もグリコーゲン(糖)も一緒に回復するのだ。

脳の疲労のことを「中枢性疲労」というが、運動を行うことで筋肉内のグリコーゲンを大量に使い、さらにたくさん寝て休息を取ることで中枢性疲労も一緒に回復させる事ができるかもしれない。

さらにコルチゾールの作用は血糖値上昇である。身体にとって負荷のかかる運動はコルチゾールを増加させるが、適度な負荷はコルチゾールのバランスを調整する。だからホルモンの調整においては適度な運動がよく推奨される。

しかしコルチゾールにはネガティブフィードバック機能がある。過度にホルモンが放出されると、抑える方に働くというシステムだ。個人的な話かもしれないが、ストレスが溜まっているときにはむしろ高負荷の筋トレをするとストレス解消になる気がする。つまり高負荷のトレーニングのほうが中枢性疲労にも効果があるかもしれない。実に面白い。(ガリレオ先生っぽく)

話を戻す。ALについてだ。
ストレスにより放出されるホルモンは何度も言うがコルチゾールである。
脳にエネルギーである糖を送ることで、ストレスに対抗しようとする。

それがずーーーーっと出続けている状態が良くないのだ。様々な病気につながる。
それを解決するために運動と休息(睡眠)を取り入れてはどうかといった話だ。
興味深い…このことについての先行研究をもっとしたいと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?