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マサッチオの「楽園追放」〜愚かでどうしようもなくて だから愛で、 だから人間

今年の春、千住博さんの絵「ウォーターフォール」を観た。
あまりの感激で美術員に聞いた。
「今じゃ、飛ぶ鳥を落とす勢いの画家です」
知らなかったことが恥ずかしかった。

千住博さんの著書「名画は語る」では
有名な絵画の楽しみ方、魅了された理由などが書かれている。

その中で、ダントツ 私が気に入った絵が
マサッチオの「楽園追放」
絵の中に描かれているのはアダムとイヴ
「出ていけ〜!」と神様のお怒りで
嘆き悲しみながら出ていく二人の表情に惹きつけられた。

千住博著「名画は語る」P129の絵画「楽園追放」より

実に人間的な表情で、この場合恥も外聞もなく、という言葉が適切かどうかは分かりませんが、とにかく傍目も気にせず嘆き悲しむアダムとイヴは、ここにおいて、人間的表情初披露です。
まるで現代人のようにアダムは顔を隠し、イヴは体を隠します。顔を歪ませて嘆き哀しむアダムとイヴはそれまでの中世絵画には絶対見ることのなかった生々しさで、まるで現代の映像表現のようです。
ここは西洋絵画史上初めて人間的な迫力あるリアリティーが生まれたのです。
いわば人間誕生の瞬間なのです。想像するにおそらく現在でも嘆き哀しむ男はたとえ裸でも顔を隠し、女はたとえ裸でも体を隠すのではないでしょうか。

千住博著「名画は語るP132」


こんなに人間を人間らしく描いてくれた絵を見たことがない。
愚かなんだよ。 愚か者なんだよね。
人間は罪を犯すことから始まったんだよ。

何度も絵画の中に描かれたアダムとイヴを見てみる。
さめざめと泣いてるイヴの顔がたまらなく情けない。
あ”〜ぁぁぁぁ ぅぅぅぅ〜  私馬鹿よぉ〜
まるで赤ちゃんのように泣きじゃくるしか出来ない。
でも手はしっかり二箇所隠してるのは、なにわともあれ女性の本能かも。

かたやアダムは後悔先に立たずだけど
う〜〜〜ぅ、なんて愚かな事を。。と声が聞こえてきそうなくらい。
ちょっと生真面目そうでもあり抜けているようでもあり
顔を隠すのは男性ゆえのプライド? 

どちらにしても二人は真剣に嘆き悲しでいるはずだが、
この無様な姿こそ人間の真の姿だと気付かされる。
おー!人間ばんざい! 不完全さゆえの愛おしさよ。

私は声を出して笑いたいくらい 笑いが込み上げた。
ありがとう! マサッチオさん
この絵を見て愚かな自分が救われた。
スーッと気持ちが軽くなった。今日が始まる


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ダイヤモンド・ペッパー
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