ピアノを尋ねて〜Tne piano Tuner
若い妻(エミリー)を亡くした初老の夫 林(りん)さん
そのエミリーが弾いていたピアノを調律していたわたし
ピアノを通して二人の過去と今が交差する。
そこから、何かを失い、何を得るのか
わたしは、子供の頃にピアノを弾く才能を見出された
特別なわたしだった。
だが、生きることに精一杯の父親には認めて貰えない。
諦めて辿り着いた職業は調律師だった。
今更、40代になって
失われた時を取り戻すことは出来ない。
ピアニストほどじゃないけど、ちょっと上手く弾ける人。
林さんと一緒に
ピアノを買い付けに行ったニューヨークの街で、
薄くなった髪の毛を隠すように野球帽を被り、
いったい、わたしは視線をどこに置いて歩いているの?
その野球帽を脱いでベレー帽を買ったのは何故?
ニューヨークの街は、ベレー帽は、何を与えた?
ニューヨークで出会う人々
過去から甦った人々、
著名な作曲家やピアニストの人生も
交差して、めくるめくっていくわたしの心
最後に林さんと二人で向かった
ピアノの中古工場の光景がわたしを揺さぶった。
わたしは、ここで初めて
過去の自分と真正面から対峙したのかも知れない
取り返しのつかない行動として
パーン!と感情がはじけてしまった。
そんな時、
幼い時に才能を見出してくれた邱先生からメールが来た。
ずっとわたしを気にかけてくれた人だ。
台湾から引っ越すという。
先生は、歳を重ねたせいなのか、
もう会う事もないからだろうか
過去の事や初めての告白や 語ってくれた。
わたしに伝えたかった言葉〜
この本の中で一番突き刺さったの一文だ。この一言に尽きる。
物語を読み進めていくうちに
どんどん、わたしのいやらしさが増してくる。
他人を蔑んでみたり、何かを恨んでいるかのようでもあり
屈折した心が痛いほど伝わってくる。
これって作家の筆力だけど
それにプラスして
自分の挫折した夢や私自身の醜いところとクロスしたんだろう。
卑しい気持ちがいっぱいだ。
本を読んだ後 ラフマニノフをYoutubeで聞いた。でもわからない。
ピアノを弾けることは、
弾けない私にとっては特別に素敵なことに変わりない。
追記として リヒテルはヤマハのピアノがお気に入りだったそうです。