図1

「インド地下鉄網 急拡大」から

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三点に注目したい
  1.インド魅力全体像
  2.商習慣・文化の壁
  3.モディノミクス要件

関連代表記事 日本経済新聞 2018/11/14 朝刊https://www.nikkei.com/article/DGKKZO37700440T11C18A1FFJ000/
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A インド首都を走るデリー・メトロの営業距離が314km。これは東京を超えている。そして、年内にも世界4位のニューヨークと肩を並べるとのこと。急成長遂げるインドの地において、大課題である環境や交通問題に手を打ちながら戦略的外資呼び込みを実現し続けるためにも、鉄道・周辺開発は重要である。相当な規模の円借款事業が入り込んでいるのは見逃せない。直近でも2018年10月29日に、JICA/インド政府間で総額2,469億4,200万円を限度としたLoan Agreement(円借款貸付契約)が結ばれている*1。

  (1) ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道事業(第二期)(1,500億円)
  (2) ウミアム・ウムトゥル第3水力発電所改修事業(54億9,700万円)
  (3) デリー高速輸送システム事業フェーズ3 (III)(536億7,500万円)
  (4) 北東州道路網連結性事業(3)(第一期)(254億8,300万円)
  (5) トリプラ州持続的水源林管理事業(122億8,700万円)

 その7か月前である2018年3月29日は、総額1,878億8,400万円を限度とする円借款貸付契約が結ばれている*2。

 (1) ムンバイメトロ3号線建設事業(第二期)(1,000億円)
 (2) チェンナイ海水淡水化施設建設事業(第一期)(300億円)
 (3) ヒマーチャル・プラデシュ州森林生態系保全等(111億3,600万円)
 (4) チェンナイ都市圏高度道路交通システム整備事業(80億8,200万円)
 (5) 北東州道路網連結性改善事業(フェーズ2)(386億6,600万円)


B インドの成長性は無視できず、日本とインドとの「相性」も好適であって、更に未来のアフリカ進出を企んだ場合にも、「インドの力(印橋)」は重要になる。インドについては、現状を理解しておいて損はないし、経営者として、インド進出機会はしっかりと探る必要がある。まず、魅力あるインドが「日本好き」であることが重要である*3。

 ◆関心のある取得したい言語 日本語
 (有識者50%、一般39%、平均48%、ランク1)

 ◆信頼できる国
  日本(有識者46%、一般44%、平均46%、ランク1)
  アメリカ(有識者14%、一般16%、平均14%、ランク-)
  ロシア(有識者24%、一般21%、平均23%、ランク2)

 ◆重要なパートナー
  日本(有識者87%、一般85%、平均87%、ランク1)
  アメリカ(有識者68%、一般75%、平均70%、ランク2)
  ロシア(有識者69%、一般63%、平均67%、ランク3)


A 経営として考えれば未来から現在の打ち手を考えるべき。BloombergのインドのGDP推移(予想)をみると、2017年には世界7位であるが、2027年にはアメリカ・中国に次ぐ3位に浮上すると予想されている。現状としては、名目GDPやフォーチュングローバル500社企業数などが中国の足元にも及ばない状況*4であり、即ち、今後の指数的成長が期待されている状況である。歴史的には、ガンジー…バジパイ政権と移行し、マンモハン・シン政権の際に1人あたりGDPが上方転換を開始し、2012年や2013年頃の停滞を契機に、モディ政権に移行し、海外直接投資の増加なども合わせながら高い経済成長性を維持している状況でる*5。


B 成長期待が高く日本との親和性も高いインド市場を、無視するわけにはいかないだろう。特にモディ政権に移行してからは、未来を「簡単にわかりやすく表現」しており、方向性を把握しやすい。それはモディノミクスとも呼ばれ、例えば次の6つが挙げられる。

 1)メーク・イン・インディア
 2)デジタル・インディア 
 3)スタートアップ・インディア
 4)クリーン・インディア
 5)スキル・インディア
 6)スマートシティ構想(100都市)


A 日本としては、円借款を利用したインフラ整備のみならず、スズキのようにインドに根を張る事業をより進めるべきである。注意が必要なのは、成長見込みが高く親和性が高いから成功するとは言えないこと。インドで事業を安定開花させるには、その商習慣や風習から、20年程度程度のスパンがかかるものと覚悟する必要がある。モディノミクスの税制改革GST、デジタルインディア、スマートシティ構想、クリーンインディアなど…どれも重要であるが、メーク・イン・インディアについては、日本の旧来型製造業が再び飛翔する契機になる可能性も高い。


B メーク・イン・インディアとしては、2025年までにインドでのモノづくりを、GDP占有率で25%にまで高めることを狙っている。現状が16%程度であり、急激な経済成長があることを考えれば、インドでのモノづくりへの進出は、モノづくり企業としてはスコープしておきたい。特に重要産業が25個絞られており、ここに該当するのでればなおさらである*6。

 (一例) 自動車、自動車部品、航空、バイオ、化学、建設、防衛、電子機器、IT/BPO、皮革、石油、医薬品、港湾・海運、鉄道、再生可能エネルギー、道路・高速道路…。


A モノづくり企業がインドに展開する場合、デジタル化はほぼ前提となる。この時に、インドパートナの力をフル活用できるわけだが、「デジタル化の方法」については吟味が必要である。例えば、製造をデジタル化しデジタルファクトリにする場合、従来構築してきたQCフローなどが役立つわけだが、何でもかんでもデジタル数値にして対等な扱いをすればいいというわけではない。どの数値をひっぱり管理すべきなのか、科学的洞察に基づいてピックアップしていかないと、オートメーション化されたときに、何を管理しているかがわからなくなる。同様に、IoTなどで引き出す変数設定もそうであるし、情報ごとの管理フェーズ設定なども重要になる。


B 鉄道網が整備されるということは、経済活動のフィールドが変化するということである。推進しているEVとの「コネクト」の観点も当然無視できない。外資誘致で競っている洲ごとの戦略も変わってくるし、インド入りする企業の集積場所も当然変わってくる。これらを総合的に捉えた場合、企業の経済活動を連結させる基盤であったり、EVと鉄道を総合的に扱うモビリティプラットフォームなども続々と誕生すると考えるのが自然だろう。この延長で、スズキが代理店・修理工場をち密配置し勝利への一手としたように、EVなどの修理工場も続々と誕生するだろうし、クリーンインディアと合わせてそれらの修理工場やステーションへのトイレ整備も進むかもしれない


A インドの未来は、モディノミクスの明確な要件から構想し、それらを連結させることもできる。そのような世界観をインド企業と共に作ることが重要。包括的な思考の中からXX製造などに乗り出し、自らエコシステムを拡大させ深みを与えるように汗を流す必要がある。


B インドについては、中長期的に戦略を立てるべき。繰り返しになるが、インドで事業を安定開花させるには、その商習慣や風習から、20年程度程度のスパンがかかるものと覚悟する必要がある。つまり、「中長期的戦略で2030年に立ち上げたい」というのであれば、机上調査は早々に終わらし、現地に飛び込みネットワークを信頼関係を構築しエコシステムを作り上げる努力を早々に始めないといけない。そして、中長期的戦略であり、戦略的赤字を継続的に発生させるものとして堂々と構えることも、場合によっては必要になってくる。


A 中途半端では無理である。現地出向組をしっかりと組成し、権限を委譲。本社議決案件でも現地との連絡をスムーズにし、スピーディにこなせるようにしておく。2年1回くらいでの入れ替えも戦略的に行い、戻ってきた社員の居場所は事前に準備しておく。インド進出を企み続けていては、いつまでたっても芽は出ない。身を投じる大胆さが、ここでは勝利への一手になる。


*1 JICA インド向け円借款貸付契約の調印:新幹線をはじめとした様々な分野での協力を通じて、環境と調和するインドの成長に貢献     https://www.jica.go.jp/press/2018/20181030_01.html
*2 JICA インド向け円借款貸付契約の調印:様々な分野での協力を通じて、インドの包摂的かつ持続的な発展に貢献     https://www.jica.go.jp/press/2017/2018_0330_01.html
*3 外務省南西アジア課  インドにおける対日世論調査     https://www.in.emb-japan.go.jp/files/000211862.pdf
*4 IMF World Economic Outlook       https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2018/09/24/world-economic-outlook-october-2018
*5 国際協力銀行 インドの投資環境/2017年8月 (第3章 経済概況 ) https://www.jbic.go.jp/ja/information/investment/inv-india201708.html
*6 Make in India www.makeinindia.com/home

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