「ウィーワーク、交流促すオフィス」から
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三点に注目したい
1.「最強のチーム組成、及び運用環境」プラットフォーマ
2.個人、チーム、チームとチームの能力
3.プラットフォーマとして支配権を握る流れ
関連代表記事 日本経済新聞 2018/11/15 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO3777282014112018TJ2000/
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A SBGがウィーワークに総額1兆円近くを投じていることになる。ウィーワーク自体は、世界24カ国、83都市で事業を展開し、31万9000人の会員数を誇る事業体である。フェーズとしては果敢な投資で成長促進する期であると考えられる。売上を拡大しながら戦略的な赤いEBITDAをデザインし、時価総額を上げ、必要あらば膨らんだマルチプルで直ぐに買収をかけ成長を更に促進する段階。
B ウィーワークの価値や意義について色々と議論されることが多いが、1つ注目すべき点は「最強のチームとは何か」という問に的確に回答できる企業になりうるということではないだろうか。
A 日本が直面している生産性問題は根深いが、グローバルにも当然あてはまる議題である。特に日本の場合は、歴史的に放置してきた嵩張る間接部門の影響で、過度に生産性が低いのが大きな問題。嵩張った部分をシェイプアップし分母を小さくする手術は必須であるが、その後必用になるのは、生産性の分子。即ち、同じ時間枠で発揮可能なバリューをどこまで上げられるのかということ。
B 個人個人の能力開発や、AIなどで武装することにより発揮できるバリューを底上げすることは重要。これと対を成すのが、チーム(組織)としてのバリュー。組織としてのバリューは、個々人の人間性や内面の影響も色濃くでるため非常に奥が深いが、テクノロジー進化により見える部分も多くなってきている。HR-TECHに代表されるX-TECH領域の貢献が非常に大きい。特に、スマホセントリックな世界が実現したことや、トリリオンセンシングのようなIoTの世界に突き進みそこにAIが相乗していく世界は、「個人の本質的能力」「チームとしての最適解」といった領域を、今後より活性化させドライブしていく。
A 「個人の能力とは何か?」をより正確に握る力は、「最強のチーム組成」の土壌になるだろう。個人の能力というのは非常に奥深い。例えば、有機合成を15年やってきたR&Dを生業とする人財Xがいた時に、この人財Xの歩んだ道を単に見える化しその専門性を別途評価したとしても、その人財に対する評価は「有機合成分野での…」という断り書きが付くことになる。しかし、日々の仕事への姿勢をみていると、情報さえ常に刷新すれば、人財Xは有機合成に関わらず多くのR&D分野にて大きな戦略的道筋をたてそれを引っ張る能力に秀でていると評価できたかもしれない。或いは、皆が嫌がるようなチームをクローズさせるようなフェーズでも、リーダーシップを発揮し、周囲に気を配り、ことを遂行できる貴重な人物かもしれない。これを、表面上の有機合成という専門分野上での活躍のみで評価すると、大きな機会ロスをしかねない。
B 本来であれば、上司の部下に対する評価でこのような側面が抽出されるべきだが、半期に一回程度実施されるであろう面談で、このような踏み込んだ部分にまで対話をし評価をし、それを蓄積し、いつでも人事ファイルとして引き出し、トップのカードとして機能するようにしている企業は少ない。理由は2つある。1つは、一貫した人事評価・管理系がないこと。2つは、評価する側の意識や能力の欠如。HR-TECHのような仕組みは、これらの問題を破壊できる。しかし、そのような仕組を企業に導入しても、それを運用可能な組織体系や意識改革が伴わなければ、導入しても微小な効果しか享受できない。
A 「いい仕事をする人」は「幸福である」確率が高いということがわかっている*1。幸福学は世界的に注目を集めており、それは、個々人の生産性向上につながり、チームとしての生産性に繋がっていく要素である。個人の本質的能力を見極めた上で、プロジェクト内容に合わせて必要な人財を選択していくわけだが、この時に個の能力だけでなく、チームとしての能力という視点が出てくる。当然、チームとチームでコラボするときは、チーム群としての能力という問題がでてくる。
B ウィーワークの秀逸なのは、「新しい可能性を見出せる最先端の場所」といった名札が既についているため、そこに参画する企業も、このような路線を意識しての参加している点である。自社内では部門間の壁や役職の壁をどうどうと構えている古株企業であっても、ウィーワークへの参画については「変わろうという意識」をもって参画しているケースが比較的多い。
A 登録されている企業や個人の情報。イベントでの振る舞いや交流の情報。コラボした企業や個人が産んだ成果物やそこに至る過程の情報。しかけるイベントの内容と、コラボ率や成果物創出率との相関。ウィーワークオフィスを利用している企業の、利用に対する本社の指示命令系統の状態。。。新しい知の・働き方のプラットフォーマであるウィーワークはこれらを採れる立場にいる。得た情報から最強チームの示唆を、新しいチームの出会いへと無償で導入していけば、正の循環が形成される。
B 表現をかえると、グローバルな企業のイノベーションを支える「最強のチーム組成、及び運用環境」を提案するプラットフォーマとして、ウィーワークは未来を支配できる可能性がある。現在はこの路線「色」をまだ強くだす必要はない。戦略赤字で拡大を継続し、ウィーワークという場になれたユーザが十二分に増殖した段階で、徐々に路線を明確にすればよい。その際、USERがウィーワークに要求する事項を改めて洗い出す必要があることは言うまでもない。
A 急激に「色」を変えると、止まらぬ脱退という流れができる可能性がある。獲得したUSERの一定数の脱退は未来に向けて許容できても、許容不可なボーダは存在しており、そこを見極め、未来の絵を実現するために舵をとる必要がある。どの路線にいずれウィーワークが動くかは定かではないが、現状の「場」に対して、より強い「意味」が付加されたとき、マルチプルはさらに跳ね上がることになる。
*1 HBR EI Series http://diamond.jp/go/pb/ei/