「米中貿易戦争加速」から
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三点に注目したい。
1.中国における「蓋」
2.貿易・軍事・ハイテク⇒ 金融
3.依存度と分散
関連代表記事 産経ニュース 2018.10.8 10:30
https://www.sankei.com/world/news/181008/wor1810080011-n1.html
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A 中国もアメリカもひくにひけない構造になっている。両国の色を中和できる第三国が必用かと思う。
B 中国は強い経済成長という魅力により、デジタル化で格差脆弱性の増した状況から不満が爆発するのをうまく抑え込んできた。しかし、蓋は蓋である。自国の経済成長の鈍化が実感として強く肌を叩くようになれば、不満噴出を蓋で抑えることは困難になる。よって、中国としては、「アメリカの自国1stの我儘のせい」という看板を掲げ、ここに果敢にグローバルリーダとして立ち向かう姿を演出し、確実な情報規制を併用しながら不満の方向性をコントロールしていくしかない。
A アメリカもおかしな国。中国の破竹の勢いでの成長により、雇用が奪取され、製造業が弱くなったと考える陣営がいる。一方には、グローバル派遣が中国2025の達成含めて中国に奪われると考える陣営がいる。これらは対中国という共通目標を掲げ、一体化する。つまり、選挙による緩急はあっても、ポストトランプになったから米中戦争が収まるかというと、そうではない。その後も続くと考える方が自然である。
B 中国とアメリカの攻防を見ていると、ポスト民主主義/社会主義といった主義に対する未来への展望にも着目する必要がでてくる。中国自体は、リーマンショックを主たる契機にG20でのリーダーシップを発揮し、WTO加盟と製造力を武器に社会主義市場経済の実証を行ってきている。このペースを維持すれば向こう10年でアメリカ越えをすることになる。
A 中国と貿易国Xとの依存度関係をみると非常に面白い。貿易国Xは、オーストラリア、日本、マレーシア、韓国、シンガポール・・・等である。例えば、オーストラリアであれば中国への依存度は30%超であるが、中国のオーストラリアへの依存度は2%に過ぎない。他の国でもこのような大きな非対称性がでており、中国が相対優位な状況にある*1。ある種のアジア圏の実効支配(依存関係)が出来上がっている状況であり、アメリカの見ぬふりのできない状況になっている。
B 一帯一路による港湾やインフラの支配は、実質的な侵略である。また、第1,2列島線支配という地政学的活動も活発である。このような面もあり、今の中国vsアメリカの構図というのは、グローバル貿易・軍事的パワー・ハイテク覇権の3点制覇に対する駆け引きの一部であると見て取れる。
A 貿易側に目を戻すと、このまま応酬が続けば、両国の輸入量の非対称性から、中国が先に手玉不足になる。その場合に言われるのは、所持している1.2兆ドル程度のアメリカ債の売却であるが、FRBが買い戻す形で収束すると考えるのが綺麗だろう。このような金融戦争へのシフトを考えると、基軸通貨としてのドルプラットフォームを有するアメリカの方が、圧倒的な相対優位な立場を築いていると言える。米企業との取引停止や資産凍結など、自由度高く、効果的な技をアメリカは繰り出すことができる。
B 貿易面でも金融面でも追い込まれる状況、そして不信感により鈍化する一帯一路の状況を考えれば、中国は物理的な支配構造を強化する可能性が強くなる。尖閣諸島や99年リース港湾の軍事化など緊張感が高まっていく未来は想像しやすいのではないか。そこにむけて、日本はどうするのか。アメリカを刺激しないように、進めている日豪印の戦略提携はより深耕し、アジア圏でのネットワーク強化を進化させておくことが望まれる。
*1 Assessing and Strengthening the Manufacturing and Defense Industrial Base and Supply Chain Resiliency of the United States
https://media.defense.gov/2018/Oct/05/2002048904/-1/-1/1/ASSESSING-AND-STRENGTHENING-THE-MANUFACTURING-AND%20DEFENSE-INDUSTRIAL-BASE-AND-SUPPLY-CHAIN-RESILIENCY.PDF