見出し画像

丁寧に生きることでお金の不安からも解放される『シガロヴァダ・スッタ』①

今日はブッダによるライフ・コーチングまたは資産運用に関するコンサルティングとも取れるような内容のシガロヴァダ・スッタを紹介したいと思います。興味深いことに、ブッダは出家を覚悟しないのであれば、財を守りなさいと在家に説いています。お金は悪だとは一言も言っていないのです。

実際にこのスッタの後半部分でお金を①生活費②自己投資③貯蓄④寄付の4つに分けて運用することで、お金のストレスが緩和されて精進することができると説いています。検索するとそこだけを抜粋して引用されがちなのですが、(しかも寄付については割愛されている)ブッダがなぜそうした方がいいと言っているのかは、全体を読むことではじめて見えてきます。

結果から言うと、丁寧に生きることで身の回りの環境が整い、精進に適したマインドと体を作ることができる。と言っているのです。つまり、丁寧に生きると、お金の不安も解消されていくということです。

ではディガ・ニカヤの31番目のお話、シガロヴァダ・スッタを翻訳していきましょう。経典には独特な『まとめ記事』的体系があるので、読みものとしては面白くない部分もあります。ですので目次をつけて要点が分かり易いようにしています。読みたい所から目次をクリックすることもできますよ!

シガロヴァダ・スッター若者シガラとの対話

ラジャガハの近く、リスの住処である竹林にお釈迦さまがいらした時のこと。


シガラという名の若い在家の男が朝早く起き、ラジャガハを発ち、濡れた服に濡れた髪で各方位へと手を合わせ、祈りをささげておりました。東に、南に、西に、北に、下に、上に。


お釈迦さまは袈裟をまとい、ラジャガハに托鉢に向かう途中でありました。その道中、シガラが祈りを捧げているところに出くわし、声をかけられたのです。


『若者よ、そんなに朝早く街を発って、濡れた服に濡れた髪で、各六方位へと手を合わせ、東に、南に、西に、北に、下に、上に、何を祈っておられるのですか?』


『賢者さま、わたしの父が死の間際に”愛する息子よ、六方へと祈りを捧げなさい”とわたしに言って残したのです。ですからその遺言のとおり、父への敬意と尊厳をこめて、その言いつけを聞き、こうやって早起きし、街を出て濡れた服に濡れた髪のまま、六方へと祈りを捧げているのです。』


『若者よ、それではせっかくの祈りが、本当の祈りにならないではないですか。その六方は意味のあるものとして祈らなければ祈りとして意味をなさないでしょう。』

『賢者さま、でしたらどのような意味をもってして祈りを捧げたらいいのでしょうか?もしさしつかえなければ、本当の祈り方をわたしに教えてくださいませんか?』


『若者よ、よく聞いて心に留めておくのですよ、今からお伝えしましょう。』


若きシガラは、『ありがたいです!賢者さま!』と答えた。そしてお釈迦さまはお答えになった。

『若きものよ、智慧ある者は六方を制することで4つの悪しき態度を根絶し、4つの悪しき選択を根絶し、散財のもととなる6つの迷える道を根絶やしにし、よってこの14の悪条件を制することでこの現実と、それを超えた真実の両方の世界でよりよく精進できる道を得るのです。そして肉体が尽きてしまっても、その続いていく先もしあわせなものとなるでしょう。』

4つの自分を苦しめるアクション

『では智慧あるものが根絶やしにした4つの自分を苦しめる態度とはなんでしょう?人生を邪魔するものとは、

①命を傷つけること、②与えられていないものを奪うこと、③愛欲に振り回されること、④うそに振り回されることです。』

そうお釈迦さまはおっしゃった。だから師が教えを説くときもこう言われるのです。

『命を傷つけること、与えられていないものを奪うこと、嘘をつき、愛欲に溺れる、この4つの悪しき癖を賢いものは決して勧めたりしない。』と。

4つの自分を苦しめるチョイス

『では自分を苦しめる選択とは何でしょう?

それは①欲によって選択されるということですよ。そして②怒りによって選ぶこと、③無知によって選ぶこと、④恐れによって選ぶことの4つです。

ですが賢い者は欲、怒り、無知、恐れから何かを選ぶということはしません。だから悪しき行いをすることはないのです。』

そうお釈迦さまはおっしゃった。だから師が教えを説くときもこう言われる。

『欲、怒り、恐れ、無知から行いを選択する者は誰でもダルマに逆らうこととなり、持っている徳を失うことになる。
満月が欠けて半月へ向かうように。
反対にダルマに逆らうことなく、欲、怒り、恐れ、無知から選択することのない者はだれでも、半月から満月へ向かうように、徳が満ちていく。』と。

散財につながる6つの道

『では若者よ、歩むべきではない、散財につながる6つの道とは何でしょう?

①中毒になるほど何かを過剰摂取すること。
②夜徘徊すること。
③娯楽に夢中になること。
④ギャンブルやゲームに熱中してしまうこと。
⑤そういった仲間たちとつるむこと。
⑥自堕落な生活をすること

この6つです。』

①過剰摂取による中毒で顕れる6つのこと

『では若者よ、何かの過剰摂取による中毒で、夢中で盲目になってしまったら顕れる6つのこととは何でしょう?

1つ目は豊かさの喪失。
2つ目は諍いの増加。
3つ目は病気を察知する能力の低下。
4つ目は悪い評判が立つ。
5つ目は羞恥心の低下による露出。
6つ目は考える能力の低下。』

②夜に徘徊することで顕れる6つのこと

『では若者よ、夜に徘徊することで顕れる6つのこととは何でしょう?

1つ目は無防備で危険に自ら身をさらすということ。
2つ目は自分の妻や子供、家族を危険にさらすということ。
3つ目は自分の家を危険にさらすということ。
4つ目は悪いことをしているのではないかと疑われやすくなること。
5つ目はありもしない噂が立つ対象となりやすいこと。
6つ目はトラブルに巻き込まれやすくなること。』

③娯楽に耽っていると顕れる6つのこと

『では若者よ、娯楽に耽っていると顕れてくる6つのこととは何でしょう?

1つ目はダンスがどこであっているのか
2つ目は何の歌が流行っているのか
3つ目は何の音楽が流行っているのか
4つ目はコンサートがどこであっているのか
5つ目はシンバルがどこで鳴っているのか
6つ目はゲームがどこであっているのか、

これらが常に氣になってしまうのです。』

④ギャンブルやゲームに夢中になると顕れる6つのこと

『では若者よ、ギャンブルやゲームに夢中になると顕れてくる6つのこととは何でしょう?

1つ目は勝つと妬まれること。
2つ目は負けると失ったものに後悔すること。
3つ目は富を失うこと。
4つ目は何を言っても合法でないために抗えないこと。
5つ目は友人や周囲の人々から見放されること。
6つ目は結婚相手としてそぐわない甲斐性なしと判断されてしまうこと。』

⑤そうして生きていると集まってくる6つの仲間

『では若者よ、ではそうやって生きているとと現れてくる6つの仲間とはどんな者でしょう?

そうして生きていると顕れてくる結果として、①ギャンブルやゲーム仲間、②放蕩者、③アルコール中毒者、④詐欺師、⑤うそつきな人、⑥暴力的な人が周りに集まって、あたなたの友達となっていくでしょう。

⑥自堕落な生活をすると顕れてくる6つのこと

『では若者よ、だらしない生活をしていると顕れてくる6つのこととは何でしょう?

仕事をしない者はこう言うのです。
1つ目は寒すぎるからしない。
2つ目は暑すぎるからしない。
3つ目はもう夜遅いからしない。
4つ目は朝早すぎるからしない。
5つ目はお腹が空いているからしない。
6つ目はお腹がいっぱいだからしない。

そんな生活をしていたら、何も片付かないでしょう。新しく財を得ることもなく、持っていた財は減っていくばかり。』

そうお釈迦さまはおっしゃった。だから師が教えを説くときもこう繰り返すのです。

『友よ、友よ、と寄って来くる者も、何かしら自分に利益がない限りは寄ってはこない。

①日の出まで眠ること、②愛欲に耽ること、③貞操観念のないこと、④悪意があること、⑤そういう人たちの中にいること、⑥欲にまみれること、これらが人から豊かさを奪うものです。


そういう人たちの中に身を置いていると、次に顕れてくるのは

賭博に溺れ、異性に溺れ、酒に溺れ、踊り、歌うことに耽り、昼間に眠り、夜に徘徊し、同じような者たちとつるみ、欲が深くなっていく。これらの9つです。これらのことが人から豊かさを奪っていくのです。

賭博にふけり、酒やドラックに耽り、女を探すようになると、他の者や年長者とは関わることをやめ、同じようなことをしている者とだけつるむようになるのです。月が欠けていくように。

貧しく、お金もないのにまだ飲み足りずに外をうろついて、借金だけが増えていく。水中に沈んでいく石のように。そして家族からは見放されていく。

昼間に眠る者は夜に活動的になり、ずっと中毒の状態で普通に生活を送ることができなくなっていく。

暑すぎるだの、寒すぎるだの、遅すぎるだの言って何も片付かない者は、チャンスが全部過去へと過ぎ去ってしまう。

だけれども、寒さ暑さをいとわず、草一本でも丁寧に仕事を片付ける者からしあわせが遠のくことはないのです。

これだけ読むと、耳が痛い話ばかりですね。でも3500字を超えて長くなってしまったので、続きは次回へ。次回は目の前に顕れていることを丁寧に扱うことで、豊かさを築いていくというお話に繋がっていきます。


いいなと思ったら応援しよう!

だるまいこ | 仏教学者のインナーセンスオブワンダー
いただいたサポートは、博士課程への学費・研究費として、または息子の学費として使わせていただいています。みなさんのサポートで、より安心して研究や子育てに打ち込むことができます。ありがとうございます。