忘己利他と自利利他:空海と最澄からの学び
最澄は天台宗の開祖、空海は真言宗の開祖です。ふたりはほぼ同時期に活躍しました。
最澄が重視したのは「忘己利他」であり、自己を忘れて他者を第一にすることに意識を向けました。
一方、空海は「自利利他」であり、「自他ともに」という点を重視し、「自己を深めることと他者の救済は一つ」だと弟子にも説いています。
どちらも「利他」を探求しているので、これもまた、どちらが優れているとか正しいということではありません。
自分が…自分が…という意識だけで生きてきた人には自分を忘れて他者を考えることがとても重要なタイミングがあると思うのです。
また、私は子どもがいないので子守をした体験ではありますが、子どもを眼の前にすると、やっぱり、子どもに食べさせることが一番だったり、その瞬間は自分を放って、子どもを優先させます。
もしかしたら、ペットを飼っていらっしゃる人なら、自分のものよりもついついペットのおもちゃやおやつを買ってしまう、などがあるかもしれません。
それも「忘己利他」なのではないでしょうか。
一方、そればかりになって自分をないがしろにして他者を優先していると、どうして私ばかり、という思いが生まれたりして、結局他者を大切にできなくなったりもします。
あなたは今、どちらの教えが自分に最適だと思いますか?
空海は決して「自利」を優先したわけではありません。
「自利」と「利他」は別々に考えられるものではなく「自利利他」と一体として考えることを説いています。
空海は「利他」ばかりを考えることで「『自利』の道を見失うことに継承を鳴らし」たのです。
ですから、私たちも自分自身を大切にしながら、他者を助ける道を見つけることができるはずです。
ときに最澄の説いた「忘己利他」で他者を第一にし、ときに空海が説いた「自利利他」で、単なる自己犠牲ではなく、自分を深めつつ他者を思いやる道を生きる。
現代の私たちにとっても、まず自分自身をしっかりと見つめ、整えながら、周りの人たちとのつながりを大切にすることが、持続可能な「利他」の道なのかもしれません。
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