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「途上国ニュースの深読みゼミ」がスタート! ウクライナ侵攻で途上国はどうなる?

今週から始まった「途上国ニュースの深読みゼミ」はここ半年で早くも5期目となった人気のプログラム。「日本語の記事も、こんな読み方をすれば、世界のつながりがわかるんだ!」と大好評です。

初日にみんなで深読みした記事のタイトルは「ひよこ殺処分の動画が映した現実 ウクライナ侵攻が招く途上国の危機」(3月3日付の朝日新聞)。

記事の要旨を簡単に説明すると、エジプトでは、ニワトリのえさが高騰・不足したことから、ひよこが殺処分(間引き)されているという話。この要因のひとつが、えさとなるトウモロコシと大豆の価格の急騰です。

エジプトはトウモロコシも大豆も、ロシア、ウクライナ両国から輸入してきました。

調べてみると、トウモロコシの輸出市場でウクライナは世界4位、ロシアは7位です。大豆はウクライナ7位、ロシア8位。両国とも世界屈指の農業大国。豊かではない途上国にとっては、他国と競争して新たな輸入先を探し、そのためのお金を捻出するのは大変だろうなと容易に想像できますよね。

世界の輸入市場をみると、エジプトはトウモロコシで5位、大豆は6位と、実は知られざる「輸入大国」でした。トウモロコシの85%、大豆のほぼすべてを輸入に頼っています。

こういったデータを少し調べれば、ウクライナ危機がいかにエジプトの養鶏産業を窮地に追いやったのかがわかります。

ひよこの数が減るとどうなるのか。鶏肉の値段は当然急騰。庶民は、鶏肉を食べられなくなります。

そこで浮上したのが、「もも肉」が高いのなら、「鶏の足」を食べましょうという動き。ですが中国や東南アジアならいざ知らず、ここはエジプト。食文化にないこともあって、大きな反発が起きたようです。

困ったエジプト政府はその後、養鶏産業を立て直そうと、飼料を優先的にマーケットに放出するよう指示しました。ですが時すでに遅し。なぜなら親鳥までもう食用に回してしまっていたからです。親鳥を育てるには1年ぐらいかかるとのこと。ということは、エジプトの庶民の食卓には当分、鶏肉も卵も上りそうにありません。

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エジプトが直面するウクライナ危機の影響はこれだけではありません。

エジプトは実は世界最大の小麦輸入国です。主食はパンなのに‥‥。パンの高騰も庶民の暮らしを圧迫します。ちなみにエジプトの今年2月のインフレ率は31.9%と、日本をはじめとする先進国の比ではありません。

世界の小麦の輸出市場をみると、1位は断トツでロシア。輸出量の24%を占めます。ウクライナは5位。

エジプトはかねてから、自国でも小麦を栽培してきました。生産量は右肩上がり。ですが人口爆発(エジプトの人口は1億900万人)もあって需要に追い付きません。そのうえ、水不足や砂漠という問題もあって、そう簡単に栽培面積を広げられないのが現実なのです。

こういった状況に追い込まれたエジプトは昨年から、デフォルト(債務不履行)の危機に瀕しています。コロナ禍、そしてウクライナ危機を背景に、途上国では近年、デフォルトの連鎖が続いています。ザンビア、ガーナ、スリランカ‥‥。ウクライナ危機の余波は、国力が弱い途上国を直撃します。

より深刻な悪影響を被るのはいつも、先進国より途上国。経済制裁を実質的に受けているのは途上国じゃないか、と思わず言いたくなってしまいます。

こうした問題を懸念して、インドのモディ首相は先日のG20 で、ウクライナ危機の影響で食料やエネルギー(もちろん石油も)の値上がりに苦しむ途上国の苦悩を代弁しました。

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エジプトの話から少し逸れますが、上の記事を深読みして気づいたこと/再確認したこともいくつかありました。たくさんあるので2つだけ、ここでご紹介します。世界のつながりを感じてください。

まず、トウモロコシの輸入量の世界2位がメキシコであること(1位は中国、3位は日本、4位はエジプト)。メキシコといえばタコス。具を包むトルティーヤはトウモロコシから作ります。

トウモロコシを主食とするメキシコがトウモロコシをそんなに輸入に依存していて大丈夫なのか? エジプトの二の舞にならないのか? といった疑問が頭をよぎりますよね。

ところが深く調べてみると、トルティーヤの原料となる「白トウモロコシ」は自国で生産し、家畜の飼料として使う「黄色のトウモロコシ」のみを輸入に依存していることがわかりました。これで本当に大丈夫かどうかはさておき、食の安全保障をリアリティをもって考えるきっかけになったのは事実です。

もうひとつは、世界の大豆輸出の半分を占めるのがブラジルであること。大豆の原産地は東アジア。なのになぜ、ブラジルなのか。

実は、これにはJICAが絡んでいます。ブラジルのサバンナを南半球最大の大豆畑に変えたODAプロジェクトがあるのです。NGOは「環境破壊だ」と批判、それに対してJICAは「大成功だ」と誇る――というふうに評価は分かれますが、ブラジルは結果として大豆大国にのし上がっていきました。

このプロジェクトが始まった思惑はこうです。

ブラジル政府は「農地を開発したい」、日本政府は「大豆の新たな輸入先を確保しておきたい」、JICA(前身のひとつは、移民を出した「海外移住事業団」)は「日系移民の次男三男のために土地を開拓したい」。何事にも“裏の目的”はあるものですね。

それはそうと、ブラジルと日本はこの後、アフリカのモザンビーク(ブラジルと同様、旧宗主国はポルトガルなのでポルトガル語を話す)でも同じように、サバンナを大豆畑にするプロジェクト(プロサバンナ事業)を進めようと試みました。ところがこちらは現地の小農やNGOの反対も強く、JICAはプロジェクトの中止を決定しました。

もしモザンビークでプロサバンナ事業が進んでいたら、どうなっていたのか。ひょっとしたら数十年後にモザンビークはブラジルに匹敵する大豆大国になっていたのかもしれません。

さて、エジプトのニワトリの問題に戻ります。ブラジル産の冷凍チキンがエジプトに輸入され(ブラジルの大豆は7割が中国へ行く)、事情は少し緩和されたようです。

ただ大豆を作るにもブラジルは肥料を輸入に頼っています。需要の85%を満たすのはロシアとベラルーシ‥‥。

う~ん、エジプトも、ブラジルも、またロシアとかかわりが強いそれ以外の国も、ロシアに足を向けて寝られません。

こうやって1本の記事を深読みしていくと、世界がつながっていることを実感できます(上はほんの一例)。これこそが「途上国ニュースの深読みゼミ」の真骨頂。記事からわかることは無限大。4月も6月も開講するので、視野をグローバルに広げたい方はぜひ!

【〆切3/30】メディアのプロと一緒に学ぶ!「途上国ニュースの深読みゼミ」(3月、4月、6月)、受講者募集