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創造性と教育の偉人-1. ジョン・デューイー(探究演習)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」。今週から数回、教育のなかで創造性に関する代表的な3名の思想家や学者をご紹介していきたいと思います。

  • ジョン・デューイー(今回)

  • ジャン・ピアジェ

  • レフ・ヴィゴツキー

時代的には、いずれも1900年代の前半に書籍や論文などで大きな影響を与えた人たちです。つまり現代の創造性教育は100年前ごろから発展した、ということがいえます。

では、まず1人目はジョン・デューイーからです。


こんな人です

ジョン・デューイーは1859-1952年のあいだにアメリカで活躍した、心理学者・教育哲学者です。後で述べますが、アメリカという環境が彼の思想を大きく反映しています。生い立ちや経歴はこちらの本から学べます。

今日、新しい学び方として普及しているアクティブ・ラーニング探究学習は、およそ100年前のデューイーの思想がルーツと認知されています。つまり、めっちゃ影響を与えている人です。

たくさん名言を残した人

学者よりは哲学者の色が強い人で、いろいろな名言を残しています。例えばこんな言葉。

昨日の教え方で今日教えれば、子供の明日を奪う。

教育の保守的な性質に対する批判です。この先、将来の職業の半分は大人がまだ知らない職業だと言われています。でも教育では昔から、教員が持っている過去の古い知識をベースに教えている傾向が強くあります。

いま顕著になった課題を100年前から課題視していました。

教育が進歩しなければ、社会もまた進歩しない。

例えば、ここ数十年で学校が教えてきた環境問題や人権問題などは、世代ごと意識が高まり、着実に社会に根付いています。これは学校教育の成果だと思います。

人によっては学校を社会と切り離した独立的な立場であるべきと考える人もいますが、デューイーは密接に関わるべきであると考えます。(当時の学校はかなり社会と分断されていたこともあります)

こんなように、数多くの刺さる名言を残した人です。

プラグマティズム

ジョン・デューイーの思想を語るうえで外せないのが、プラグマティズムです。日本語だとプラグマティズムは「実用主義」「経験主義」あるいは「道具主義」という意味になります。

プラグマティズムの思想は、アメリカという土地が強く影響しています。

この時代、ヨーロッパでは神学に変わる科学が広まっていました。理論中心で組み立てられる学術は、ともすると現実と乖離しがちです。一方でアメリカはこの時代、南北戦争が起こっていました。

この戦争からの反省として「理論だけでなく、実際に見てやってみて判断しよう」というのがプラグマティズムです(実際はもっと複雑なのだけど)。最近でいうとアジャイルの思想とも親和性があります。

デューイーはプラグマティズムを広めた3人のうちの1人と位置付けられれています。その中でも特に教育につなげたのが、彼の功績です。

Learning By Doing

ジョン・デューイーの教育思想がもっとも表れているのが、この言葉です。

「やってみて学ぼう」これもとっても刺さる言葉です。

やってみて学ぶためには、学びの環境をもっと融合させようという考えを発展させます。博物室を中心に実験室や音楽室があるような学び舎(あくまで概念としての関係図らしいです)などを示しています。科目を融合して学ぶことの大切さを主張しているようにも見えます。

デューイー(1899)学校と社会 より作成

その後、体験学習の考えが広まって、1970年代に発表された「コルブの学習モデル」などに体系化されました。PDCAのようなサイクルで、いま見ると普通に見えるかもですが、プラグマティズムの考えがよく反映されています。

コルブ(2015)経験学習のラーニングサイクル より作成

実践だけでなく、省察が含まれている点が興味深いですし、そこから抽象化した学びに結びつけるのは、学習モデルならではの特徴です。さらに何回も繰り返して「経験を再構成させる」ということを強調しています

探求学習

デューイーは探求をこのように定義しています。

不確定な状況を、確定した状況に、すなわちものの諸要素を1つの統合された全体に変えてしまうほど、状況を構成している区別や関係が確定した状況にコントロールされ方向づけられた仕方で転化させることである。

藤原さと「協働する探求のデザイン」で翻訳されていたジョン・デューイー「倫理学」より

何を言ってるのかという感じですが、ざっくりいうと「不安から安心への移行」です。もう少し踏み込むと、バラバラな要素から1つの考えをつくるまでの過程、だともいえます。

試行錯誤したり失敗を経験しないと、探求学習は習得できません。現在の教育はこういった経験が不足していることを指摘しています。

ただ、デューイーは「経験と教育」のなかで、当時の伝統的教育(一方的に知識を詰め込む教育)と進歩的教育(探求学習的な教育)はどちらかではなく、どっちも必要だと言ってます。

なので、ただやみくもにやるのではなくて、そのために必要な知識は学ぶべきだという考えです。

学んだこと

当時の教育の位置付けは、未熟な人間を一人前にするために必要な知識や技能を与えるための場だったので、デューイーの考えがいかに先を見通していたがよくわかります。

教育のあり方は社会によって変わっていくものだから、社会で求められている創造性を学校にどう取り入れていくかが、いま問われています。

でも、これを教育委員会や学校の中の先生だけで実行するのは、正直難しいと思います。なぜなら、経験が大事だから。なので、デザイナーが教育分野に入っていくことで、社会とつながる教育に進化していけないか?と考えを整理することができました。

今日はここまでです。


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ジマタロ
デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。