『マリー・ローランサン ―時代をうつす眼』アーティゾン美術館
待ちに待った展覧会がスタートした。
ローランサンの作品との出会いは、現在開催中のキュビスム展だった。
閉館30分前、静まり返った国立西洋美術館で見た絵画は、画面の中に吸い込まれていくような不思議な力があって離れられなくなった。
彼女は美術学校の学生だったとき、キュビスムの創始者であるブラックに見出され「洗濯船」と呼ばれる集合アトリエに通うことになった。当時の前衛芸術の中心にいながら、4色を使った独自の画風を作りあげたローランサンの作品が一堂に会する。これはいくしかないだろう。
目を奪われる美しさ
素直に美しい、もっと見ていたいと思う。
19世紀になって写真技術が発達すると、それまで肖像画が担っていた役割を代替するようになった。
それから20年以上経ったパリ。ローランサンの肖像画はパリの貴族が著名人の仲間入りをしたステータスになるとも言われ、依頼が絶えなかったという。ローランサンの画風は、その柔らかい特徴的なタッチで、写実的な絵画とは一線を画しながらも、モデルの特徴を捉え、肖像画として唯一無二の魅力がある。
現代でいえば、好きなイラストレーターや漫画家に自分のアイコンを作ってもらうような感覚だろうか。もし自分のものがあったら嬉しくて、LINEやXのプロフィール画像にしてしまうかもしれない。
美術館で素直に好きだと思える作品に出会えるのは、貴重な経験である。
ローランサンと恋人
みなさんは『大豆田とわこと3人の元夫』というドラマを見たことがあるだろうか。松たか子扮する大豆田とわこが大豆田とわ子が三人の元夫たちに振り回されながらも、日々奮闘するたまらなく愛おしいロマンティックコメディーである。『もっと知りたいローランサン』を読んだときにふと思い出した。
ローランサンが詩人のギョーム・アポリネールと恋人関係であったこと、そして彼が分かれた後も生涯《Apollinaire et ses amis(アポリネールとその友人たち)》を寝室に飾っていたことはよく知られている。またローランサンはドイツのヴェッチェン男爵とも結婚(ドイツからパリに戻る1920年に離婚)しており、その他にも親しい関係にあった芸術家がいたと言われている。彼らみな、別れた後も絵を購入するなど何らかの形でローランサンを支援したということから彼女の人柄・魅力がうかがえる。
ローランサンは文通が好きだったことも有名で、多くの記録が残っている。
予習におすすめ本
展覧会と併せておすすめしたい本がある。著者のマリー・ローランサン美術館館長の吉澤氏は会期中にアーティゾン美術館で講演会も実施する。(私も1月に参加した)
ローランサンの人生、そして彼女が生きた時代を知ることで、より展示を楽しむことができた。展示に行く前にぜひ!
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