[講演録] Arturo Escobar, 他 - "Decolonizing Design, Imagining Alternative Futures"

デザインの未来を考える:多様性と共生を目指して

添付動画は、RISD(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)で2019年におこなわれた「デザインの脱植民地化と未来の想像」というテーマの講演です。主要なスピーカーは著名な人類学者であるアルトゥーロ・エスコバール氏で、彼の著書『多元的世界のためのデザイン』を中心に議論が展開されました。

1. 現代社会が直面する危機とデザインの役割

エスコバール氏は、環境問題や社会的不平等など、現代社会が抱える多くの危機について語りました。これらの問題は、私たちの未来を制限し、多様な可能性を奪っています。デザインはこれらの課題に対処し、新しい未来を創造する力を持っていると彼は強調しました。

2. 関係性の重視と新しいデザインのアプローチ

従来のデザインは、しばしば西洋中心的で個別的な視点に偏りがちでした。しかし、エスコバール氏は「関係性」を重視するデザインの重要性を説きました。これは、人と人、人と自然など、あらゆる存在が相互に関係し合っているという考え方であり、デザインにもこの視点を取り入れるべきだと主張しています。

3. トランジションデザインとオートノマスデザインの紹介

新しいデザインの概念として、「トランジションデザイン」と「オートノマスデザイン」が紹介されました。トランジションデザインは、システム全体の変革を目指すデザインアプローチであり、オートノマスデザインは、コミュニティ自身が自らの課題を解決するためのデザイン手法です。これらは、従来のデザインの枠組みを超えた新しい可能性を示しています。

4. フェミニストと先住民の視点を取り入れる

パネルディスカッションでは、ラテンアメリカのフェミニストや先住民の視点が取り上げられました。これらの視点は、共同体や非階層的なアプローチを強調し、パトリアルキー(男性中心主義)や資本主義的なシステムへの挑戦を促します。デザインにこれらの多様な視点を取り入れることで、より包摂的で公平な社会を目指すことができます。

5. デザイン教育と実践における多様性の重要性

講演では、デザイン教育や実践の場で多様性を促進する必要性が強調されました。パネリストの一人であるジェス・ブラウン氏は、玩具デザインにおける多様性の重要性やステレオタイプの打破について自身の経験を共有しました。教育カリキュラムやデザインプロジェクトに多様な声を反映させることで、より豊かなデザインが生まれると提案されました。

まとめ

この講演とディスカッションを通じて、デザインは単なる形や機能を追求するだけでなく、社会的・文化的な課題に対して積極的に関与する力を持つことが示されました。多様な視点や背景を持つ人々が協力し、関係性を重視したデザインアプローチを取り入れることで、より良い未来を創造することができるでしょう。

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