「ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー」を観て学ぶこと
ジョン・ガリアーノのドキュメンタリー映画を観てきました。
原題は "Hi & Low - John Galliano"。同氏のデザイナー人生の栄枯盛衰を表したこのタイトルよりも邦題の「世界一愚かな天才デザイナー」の方がしっくりする内容でした。
・若くしてファッションデザイナーの才能を開花
・ショーは評価されたが服は売れず経済難
・ファション界の重鎮たちが才能を潰さないよう支援
・30代でジバンシー、ディオールのクリエイティブディレクターに抜擢
・反ユダヤ発言で逮捕され解雇
・施設でリハビリ、モデルらが引き続き支援
・メゾン・マルジェラのクリエイティブディレクターに就任し復活
ショーでは自分自身もモデルのように派手に振る舞っていたため、調子に乗って失言し失脚したように思われていそうです。わたしもそういう印象を持っていましたが、映画を見たら少し同情してしまいました。
リハビリを担当した医師は、ガリアーノが3つの依存症だったと語ります。
酒、処方薬、そして仕事。
仕事中毒だったというのは意外な気がしましたが、
・稀に見る才能があった
・仕事に恵まれた
・厳格だった父親を仕事の成功で見返したい気持ちがあった
ことからすると、かなりの仕事人間だったことがわかります。
ですが、
・自分の右腕として長年献身してくれたスティーブンが急死
・ディオールでは年間30本超のコレクションをこなさなければいけない激務
・自身の経済効果が上がるにつれメディア露出など本職以外の業務も増加
・仕事の原動力だった父親が他界
という状況を考えると、精神不安定になり酒に酔った状態で暴言を吐いてしまうというも仕方ないのかなと思いました。
(反省した後にユダヤ超正統派の服装で現れる心理は意味不明ですが…)
映画の中でファッション業界の女性がインタビューでこう言っていました。
ジョンは「見たもの」を自身の創作に表層的に採り入れていた、その背景を知ろうとはしなかった、と。
彼は感性が抜群に優れていた反面、歴史の教養が不足していたのでしょう。
最近でも有名デザイナーの作品が文化の盗用と非難され炎上することがあります。もしかしたら時代感覚がアップデートされずにセンスの良さだけで勝負し続けている方々がいらっしゃるのかもしれません。
ガリアーノは、マルジェラでも創造性、経済性両面で成功を収め、クリエーターとしてのパワーは現在進行形です。ただ、彼のドキュメンタリーで過去を振り返ると、一昔前の時代性の犠牲者であったような気がします。
仕事が人生の全てだった。そのために多くを犠牲にした。自分自身も犠牲にした。
それでもナオミ・キャンベルやケイト・モスらのモデルたちは彼を支持している。彼の作品に衝撃を受けファッションデザイナーを志す若者がいる。パートナーも傍らにいる。破天荒で利己的に見える人生の中でもたくさんの愛情を降り注いできたのかなと思います。
インタビューに答えるガリアーノの表情は、精力的でありながらも以前に比べて柔和で丸くなった印象を受けました。でも、激動のロンドンで培った反骨精神やクレイジーなところは、品行方正に傾倒する今だからこそ、これからも手放さずに持っていて欲しいです。
トップ画像・出典:https://jg-movie.com/
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