7.診断方法~皮疹をみたらどう考える?~
こんにちは、デルキンです。
今回は基本的な診断方の1つをレッスンします。
視診や触診を用いた診断の流れ、皮膚科医が何を考えてみているかを提示します。
以前、DTC4回目の講義で、「治療(ステロイド外用)からみた鑑別」を記事にしました。
この方法でも皮膚病の診断や治療に有効な考え方になります。つまり湿疹など皮膚浅層の炎症性疾患にはステロイド外用が効果的なことが多く、それ以外では効果が無かったり、悪化することがある、というような考え方です。
しかし今回は、皮膚全体を見たときに、どうやって診断へ落とし込んでいくか、推理の手順になります。
視診の3Stepsを紹介します。
Step1
部位や分布をみます。(対象から引いた状態で俯瞰的にみる)
もう少し具体的に言うと、対称性か非対称性かを確認する作業です。
皮膚病が内因性か外因性かを考える手掛かりになります。
またdermadromeといって、内臓など皮膚以外疾患に由来して皮膚症状を起こしている可能性も考慮。
皮膚の状態をスキャンするごとくみて、この段階で考え得る鑑別疾患を複数考えます。
Step2
皮疹をみます。(対象に接近し、ズーム、マクロな視点でみる)
どういう皮疹が存在するのか、個疹を丁寧に同定します。
Step1で考えた鑑別疾患を裏付ける目的でみたり、他の可能性を探ります。
複数考えた鑑別診断から、確定診断へ近づいてきます。
Step3
診断を確定へ。(会話を交えて)
皮疹や問診(病歴や疑わしい原因など)の最終チェックをします。
導き出した診断に対して矛盾点がないか確認したり、気を付けておきたい点を確認します。
診断できたら、検査や治療を説明します。
例を2つ示します。
例1 患者Aさん。首、右上肢、両下肢に、かゆみと発赤を主訴に受診。
Step1: 部位や分布では、体の複数個所に非対称性に皮疹が散在している。
外因性の原因が疑われる。刺虫症? 汗疹? 痒疹?
Step2: 皮疹はいわゆる湿疹とは異なり、膨疹のようだし、浮腫性な紅斑で、その中央に点状の痂皮あり。下肢には水疱を伴うものもある。炎症が強そうだ。
Step3:皮疹中央のかさぶたは、虫に刺された形跡かな。紅斑も刺虫症に矛盾しない。公園など自然の多いところ、蚊や虫の多いところに出かけましたか?ペットや動物と触れ合ったりしていませんか?
Aさん:はい。先日、田舎へ帰省しましたが自然が豊かなところで、蚊やブユに刺されました。実家に猫もいましたが、、、あっ、ノミがいたので動物病院へ行くところだと親戚が言っていました。市販の塗り薬を試しましたが効かなくて。。。
なるほど、首や上肢は、蚊やブユなどに刺され、下肢の水疱を伴う部位はネコノミの可能性も考え得る。総じて刺虫症ではあるが、かゆみや炎症が強い。まず、ステロイド外用や、抗アレルギー薬内服で治療を開始することを提案。
例2 Bさん。半年前から、手や顔、首、背中などの症状で他の皮膚科に通院するも良くならず。かゆみや発赤にステロイド外用など処方されていた。
Step1:皮疹の分布は、顔や体、手に分かれているが、いずれも両側性で対称性だ。両側まぶたや首に軽い赤みがあって、背中は赤みが強く痒みも強い。 光線過敏、手湿疹、アトピー性皮膚炎?内因性、何らかのdermadrome?
Step2:顔、首、背とも赤みや痒みはあるが、湿疹のような多様性は乏しく、紅斑~浮腫性紅斑、項は軽度皮膚萎縮あり。手は手背の指関節などに角化を伴う紅色丘疹がほぼ対称性にみられる。
単純な湿疹、皮膚炎は可能性低い。。。皮膚筋炎、膠原病?
Step3:顔や手は、いわゆるヘリオトロープ疹やゴットロン疹が疑わしい。指の爪の根元を確認すると、爪上皮の出血がみられる。皮膚筋炎を疑うなら、項や背部の発赤はショールサインとして矛盾しない。。。半年間もステロイド外用して改善乏しい。。。外用の副作用とは異なる。
筋力や食欲、体重減少など、体の調子はいかがですか?
Bさん:筋力低下は無いと思うよ。食欲もまぁまぁかな、、少し痩せたかもね。。。とにかく、かゆいよ。手の赤みは手荒れと言われてたから、石鹸や洗剤も気を付けてたけど、全然よくならないね。。。
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