わが街の伝統産業 大阪府・高槻市
第101回 大阪府高槻市 ~「将棋のまち」をアピールする「とかいなか」にある大阪府唯一の『どぶろく』は特産品
大阪府高槻市。大阪府北部で大阪市と京都市のほぼ中間に位置する人口が約35万人の街。「とかいなか」とも言われ、都会の便利さと自然がほどよく共存し、ベッドタウンとして発展してきました。昨年12月に関西将棋会館がオープンして、将棋のまちをアピールしています。
開館記念式典では藤井聡太竜王や羽生善治会長が来場されました。市役所1階ロビーには地元の大手菓子メーカー・明治が製造したチョコレートの「王将」の駒が期間限定ですが飾られています。
その高槻市内の富田地区は江戸時代から酒どころとして知られています。今は壽酒造と清鶴酒造という2つの酒蔵がその伝統を守っています。また、高槻市は大阪府下で唯一、『どぶろく特区』が誕生しています。
通常ならば、年間製造見込み数量が6キロリットル以上でないと酒類の製造免許が下りないところ、特区として認定されたことによって、農園レストランなどを営む農業者自らが製造する場合、免許の取得が可能になったことにより、「どぶろく」の製造も盛んに行われています。
「どぶろく」も日本酒と同様にコメ、米麹、水を原料とするもので、日本酒が発酵させて濾されるのに対して、どぶろくは「濾す」(こす)という作業を得ない濁酒(だくしゅ)で、どぶろくを製造している「どぶろく特区」が全国に約150ほどあります。
市内の北部は山間部であり、「原」と「樫田」という2つの地区で「どぶろく」の製造が行われています。「樫田」では地元で作られているコメを原料に清らかな地下水で仕込んだ「どぶろく樫田」はアルコール度数が17度で、お米の深い甘みからキレの良い爽やかな酸味が特徴です。市の特産品ともなっており、「どぶろく」の愛好家におすすめです。
また、高槻市の伝統産業として江戸時代から続いている「寒天」があります。「どぶろく」と同じく、市内北部の山間部において製造されており、江戸時代は交通の便がよく「寒天の里」として栄え、国内屈指の製造量を誇りました。今では「タニチ」1社が伝統の製法を守り、昼夜の寒暖差を活かして寒天づくりを続け、水ようかんやゼリーの原料とされています。
最後に、高槻市ゆかりの人物としてキリシタン大名だった高山右近がいます。戦国時代、大名の地位を捨ててまでもキリスト教の信仰を貫いたことで知られており、茶人・千利休の弟子として「利休七哲」の一人として数えらるなど、文化人として教養も備えていました。最後は徳川幕府によるキリシタン弾圧によって、国外追放されてフィリピン・マニラで生涯を閉じました。高槻城公園には右近の銅像が建っており、城下町の風情が感じられます。
提供:伝統産業ドットコム