第十四夜 清少納言の秘密 後編

 中宮定子(一条定子)は、藤原道長の兄、道隆の娘で、一条天皇の寵愛が、最も篤かった女性である。
 しかし、道長と道隆の政権抗争に巻き込まれ、一度は出家して、宮廷を去る。そんな定子に、一条天皇は熱いラブコールを贈り、もう一度宮廷に呼び戻す。が、それから間もなく、第二皇女を出産して亡くなった。
 清少納言は、この定子の大のお気に入りであり、清少納言が宮廷を退くと、定子は白紙の手紙に、花びらを添えたものを贈り、その情にほだされた清少納言は、再出仕したという。
 定子が亡くなると、清少納言は今度こそ宮廷を退き、二度と再出仕することはなかった。


 声の主は、神々しい後光を放っているようだった。
「へへっ、すいやせん、定子さま」
 ではこの方が、私のお仕えする、定子さまか。
 顔立ちといい、立ち居振る舞いといい、その端々から、母性があふれている。天子さまのご寵愛が、最も篤いというのも、うなずける話だ。
「後宮では、控えるように申しつけたはずですよ」
「いい男がいると……つい……ねえ?」
 私に同意を求められても困る。
 定子さまは、ぷっと吹き出されて、
「お前は、その男グセさえ何とかすれば、最高の女官なんですけどねえ」
「趣味はやめられても、性癖はやめられません」
 とうとう、定子さまはお腹を抱えて笑われはじめた。
 そのまましばらく笑い続けられ、笑い止んだ頃に、ようやく私の存在に気づかれた定子さまは、
「そなたが蔦葛か。清少納言はこのような子じゃが、仲良くしてやってたもれ」
「は、はい!」
 私は、あわてて平伏して申し上げた。


 夜になって自宅に戻り、ほっと手足を伸ばした。今宵は、中将の君の訪いもないようだ。
「奥方さま、湯殿の支度ができました」
 拾が声をかけてくる。
「拾……湯浴みを手伝っておくれ」
「はい!」
 侍女を帰し、私と拾は、湯殿で心ゆくまで愛し合った。
 私の乳に、久しぶりに拾の指が這い、私のホトを、久しぶりに拾の陽物が貫く。
 私たちの息は、以前よりも合っているようで、拾は、的確に私の弱いところを突いてきた。私はその度に、はしたない声を上げる。
 拾との間に感じていたわだかまりは、いつの間にか解けていた

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