更級日記・和泉式部日記・紫式部日記 新明解 三省堂
また同様のシリーズ本、読書メーターでは上がってこない学習参考書、若しくは教科書の類である。
非常によくできたシリーズで「原文・語句の解説・文法的な解説・原文からの質問・現代語訳・訳者の状況説明」が比較的細かい字で網羅されている。1ページ読むのに結構時間がかかる部分が出てくる。
それはあなたがよく理解しようと学習したということだ。時間がかかって大いに結構だと思う。
「更級日記」が私が古文を読むのに最初に好きになった作品だったと思う。今読んでも約千年前の文学少女に感動させられる稀有な作品だ。今回、抜粋ながらも幾つか初見の章に出会えて、感動はいや増すばかりだった。下総から京への道中、箱根越えで(足柄山)出会った旅芸人に、あれが良い、あわれがりて(感心して)などと、身分を超えた感想を残した少女であった。晩年の章も初であったが、愛おしさも尽きることはなかった。
「和泉式部日記」は内容的に夫妻持ち同士の色恋沙汰とあっては興覚めであった。和歌とやり取りは読んでおいた。
「紫式部日記」この書の迫真はやはりこの章であろう。源氏物語を現代語訳の斜め読みしかしていない私にとって、古文で読む紫式部の文章は初であったが、その重鎮とも言うべき文章のうまさは格別である。現代の作家でさえ唸らせる実力のある人だと初めて知った。そもそも、宮中の出来事の仔細を描写し尚且つ、それを見ている自分、更にそれを書いている自分をはっきりと意識し、読者に知らしめる。そんな正に物書きとして出来上がった作者として存在することの驚きは凄い。
結果、更級日記の全文を、また紫式部日記の全文を何とか調達し、更に源氏物語を何とかしたいと思っている。