芭蕉紀行文集 岩波文庫
野ざらし紀行、鹿島詣、笈の小文、更科紀行、嵯峨日記の5作が納められたP180程の冊子。
中には文語調も、漢詩もあり、また異編集も挟まれていたりと読み難いことこの上ないが、例え飛ばし読みや省略をしたとしても、もう一度読みたくなる不思議な魅力に溢れた1冊である。
全体を2度読んでみて、もう一度読んでみたいと思った、珍しい本だ。個人的には作者・芭蕉に一番気負いがない「更科紀行」が地元と言う点もあり、一番気に入った。
『すさまじう高くもあらず、かどかどしき岩なども見えず、只あわれふかき山のすがたなり』という姥捨ての山に『何ゆへにか老いたる人をすてたらむ・・涙落ちそひ』
だが、自由度が高く漢詩や連歌のようなものまで飛び出してくる「嵯峨日記」も捨てがたい。だが、白眉はやはり「野ざらし紀行」であるべきだろう。芭蕉が自分の作風を決定的にする旅と言うだけあって「句作」悩む姿が浮かぶようだ。
『むさし野を出し時、野ざらしを心に思いて旅立ければ
死にもせぬたび寝の果てよ秋の暮』
もう一度でも何度でもまた読んでみたい。