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奇談綴り

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実話を元にしたちょっと怖い話や不思議なをまとめました。
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記事一覧

[奇談綴り]獅子舞

実家にはお正月に獅子舞が回ってきていた。 毎年愉快なお囃子とともに訪ねてくるので、その時家に居た人間はお布施を渡して獅子頭にかじってもらっていた。 無病息災を願っての正月の行事である。 あるとき、ふと「そういえばどこが獅子舞をやっているんだろう」と気になった。 地元の大きな神社といえば八幡宮と神明宮で、どちらも獅子舞は関係ない。 毎年来るのでそういうものだと思っていたのだが、冷静に考えると不思議だった。 獅子舞にお布施を渡しているのは祖母だったので、なんとなく由来を聞いて

[補足]ヤバい時は意外と気づけ無い

「呪詛と悪意の境目」では書かなかったが、実は今回、後輩ちゃんはだいぶヤバかった。 G先生の対面鑑定は「怪談会」として同じメンバーで何年か前にも行っており、その時はまだ一緒の職場で、後輩ちゃんもすごく元気だった。 あろうことか「私、もしかしてなにか呪われてるとか憑いてたりしますか?!」と“元気”に質問して先生に苦笑されたぐらいである。 その時に先生が言っていたのだけれど、本当に困っている人は、意外と拝み屋までたどり着けないんだとか。 まず本人がそういう気持ちにならないうえに、

[奇談綴り]生き物を飼うのが下手

猫が好きだから飼うのに向いているかと言うと、そうとは限らない、という話。 叔母は猫が好きで、夫婦で高級な血統書付きのチンチラを飼っていた。 昭和の青森の話である。 猫は外にいるのが普通、拾ってくるのが普通、という時代だった。 叔母は猫を非常にかわいがっていたのだが、そういう時代だったので、今の時代の猫飼いのみなさんが聞いたら激怒するようなことをやらかした。 つまり、外に出したのである。 叔母にも言い分があって「トイレ以外に粗相をしたからおしおきとして家の外にだした」とい

[奇談綴り]のちにツガルと名付けられた国道のラクダ

怖い話ではないのですが、状況がだいぶ奇天烈なので奇談としてまとめました。 私がその生き物を初めて見たのは、お盆の墓参りの途中でした。 はまなすラインと言われる国道279号線を走行中、海岸沿いの草地に日本では非常に珍しい生き物がいたのです。 すなわち、フタコブラクダがぼーっと立っていました。 色素の薄い北の浜辺にラクダがいるのはあまりに奇妙な風景で、車を止めてもらうほどではなかったのですが、窓にかじりついて何度も見直しました。 その場所にはかつて人気のオートレース場と小さ

[奇談綴り]滴る水音

※小ネタです 当時勤務していた会社の事務所での話。 その当時はかなり激務で、ひとりだけ残業する事が多かった。 ひとりだけとは言うものの、会社の規模がそこそこであったため、大きなワンフロアに部署ごとに別れており、完全に無人であることは少なかった。 その日も、遠くの席では複数の社員が打ち合わせをしながら残業していて、私の周辺だけぽっかりとひとが居ないような状況だった。 残業はいつものことなので何も気にせず作業を進める。 ふと水の滴る音がすることに気がついた。 私はデザイン方

[奇談綴り]とある街に居た犬

奇談と言うよりは平成の初め頃の価値観がまだユルユルだった、という話。 最近、大型犬が逃げだして警察が動くニュースを立て続けに見かけたことで、ある街で夜な夜な走っていたシェパードの事を思い出した。 昭和から平成に変わった直後ぐらいのあの時代、浅草寺では鳩の餌が売られ、そこらじゅうに鳥やら猫やらにエサをやる人が居て、野犬も放し飼いも珍しくなかった。 その街はまだ開発中の場所が多く、いずれビルが建つ予定ではあるものの、空き地になっている場所がたくさんあった。 そんな空き地の一つ

[奇談綴り]悪意と呪詛の境目

後輩ちゃんからの誘い ある日、後輩ちゃんから「G先生の対面鑑定に一緒に行きませんか?」というメッセージが届いた。 後輩ちゃんというのは前職の後輩で、オカルト好きでたまたま同じ作家さんを応援していたので、退職してからもその作家さん関連のイベントに一緒に行く仲である。 G先生というのがその作家さんで、本職が拝み屋なのに人気怪談作家というなかなかに情報量の多い作家さんである。 G先生は地方が活動拠点なのだが、たまに東京に出張鑑定にいらっしゃることがある。 この出張がなかなか面白

[奇談綴り]雨

だいぶ昔の話。 ある友人と遊びに行くと、必ず雨が降ることに気づいた。 最初は通り雨とかそのぐらいの軽い雨で「なんか良く雨に当たるよねぇ」ぐらいの感じだった。 それがいつからか豪雨になった。 晴れの予報が出ているのにその友人と会う時間だけ豪雨になる。 月に1回程度だったが、会う度に雨が降るのはさすがにおかしいのではないか、と思うようになった。 友人も「なんか変だよね」と言うようになった。 もう一人誰かがいると雨は降らない。むしろ雨の予報が快晴である。 私とその友人が二人で出か

[奇談綴り]補足:実家で飼っていた犬たちの話

ポツポツと書き留めている「奇談綴り」という話には、実家で飼っていた犬たちと、その子どもが出てくる話がいくつかあります。 補足として、簡単な紹介と時系列を書き留めておくことにしました。 最初の犬初代は「タロウ」という北海道犬になります。 私が生まれる直前に、祖父が「長男太郎だ」といってどこからかもらってきたそうです。 祖父は大変自由な人で、数多い友人や知人を把握するのは祖母でも難しく、血統書まであるその犬をどこからもらってきたのかは最後まで言わなかったし、分からなかったそうで

[奇談綴り]寺社巡りにも危険があるかもしれない話

少し前、長年行こうかどうか悩んでいたお寺にバス旅行を使って行ってきた。 なんで寺に行くのを悩むかというと、私の側にちょっとした事情があった。 それは古い友人由来で、非情に恐ろしい暗喩に満ちた夢の話と関連している。その夢に私が登場していたということで、もしかするとその寺社由来の良くないものにロックオンされているのではないかと考えたのだ。 我ながらわかりにくい説明だけど、細かいことが明らかにできない話なのでしょうがない。 古い友人に何かが起きたわけではないが、周辺に気持ちの悪い話

[奇談綴り]血縁という呪縛

ある友人がやっと一人暮らしをすることになった。 仲の良い友人達はその人が実家から離れて暮らすことをずっと望んでいたので、これでやっと本人も落ち着いて暮らせるだろうと安心した。 理由はいわゆる「毒親」というやつだ。 友人と知り合ったのは学生時代で、その頃はまだそれほど問題なかった…と思う。 年に何回か家族で旅行に行ったり外食に出かけた話をしていたし、友人も多少の愚痴を言いながらも自由に過ごしていた。あの時代の田舎の家族としては標準的であったと思う。 あくまで友人の話す家族の

【奇談綴り】叔父のワゴン車

※小ネタです 高校生の頃の話です。 部活でキャンプに行くことになり、足をどうしようかという話になって、ふと叔父のワゴン車がそのまま保存されていた事を思い出しました。 叔父は母の妹、つまり叔母の夫で、私が中学の頃に早逝しています。 私たちきょうだいを自分の子どものようにかわいがってくれて、ワゴン車もどうやら私たちを家族旅行に連れて行きたくて購入したもののようでした。 叔父が亡くなってから廃車にするのも忍びなく、メンテナンスをしながら残していたものです。 叔母に相談したところ

[奇談綴り]羽ばたき

ある日の夕方、池袋西口公園を歩いていた。 夜というにはいささか早い、日が落ちてすぐの時間帯で、行き交う人の輪郭が定かでない程度のいわゆる「たそがれ時」という時間帯だ。 西口公園は普段から人が多い。 人の少ない場所を歩こうと、見える範囲全体にぼんやりと気を配る。 ふと、「来る」と思った。 理由は特にない。 ただ、正面から何かが来る、と思った。 目の焦点を合わせると、真正面から何かが飛んでくる。 こちらにぶつかるまでもうあまり時間がない。 とっさに腕をクロスして上に持ち上げ

[奇談綴り]鳴き声

※注意:ちょっとグロテスクな描写があります 実家のそばに、小さな沢が流れている場所があり、そこは以前田んぼだった。 高度成長期のさなかに地元のスーパーに場所を売ったらしく、スーパー建設地という話だけが先行し、そこそこ広いエリアがまるごと荒れ地として放置されるようになった。 もしかしたら相続に絡んで農家をやめたとか、そういう話だったのかもしれない。2本の沢に挟まれていたので住宅地にはできなかったようだ。 田んぼだった部分に土を盛った後は放置されていたので、雑草が生い茂る荒れ