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犬の話

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奇談綴りの中で犬の出てくる話をまとめました
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[奇談綴り]とある街に居た犬

奇談と言うよりは平成の初め頃の価値観がまだユルユルだった、という話。 最近、大型犬が逃げだして警察が動くニュースを立て続けに見かけたことで、ある街で夜な夜な走っていたシェパードの事を思い出した。 昭和から平成に変わった直後ぐらいのあの時代、浅草寺では鳩の餌が売られ、そこらじゅうに鳥やら猫やらにエサをやる人が居て、野犬も放し飼いも珍しくなかった。 その街はまだ開発中の場所が多く、いずれビルが建つ予定ではあるものの、空き地になっている場所がたくさんあった。 そんな空き地の一つ

[奇談綴り]ある犬の一生

子犬の誕生中学生の頃、飼っていた犬が子犬を4匹生んだ。 今なら真っ先に避妊をするのだけど、昔の田舎の事で、犬にお金をかけて何かするなんて贅沢、という風潮だった。 そんな状態で外飼いだったから、父親のわからない子犬だった。 しかも母犬も子犬のお世話が苦手らしい。 ネグレクトこそしないが、人間がそばに来るとお世話を全部人間に預けて自分は遊びに行きたいとねだる。 そんな状態だったので、人の居ないほぼ里山の公園まで散歩に行き、母犬には自由に駆け回ってもらって、子犬には芝生の上で日

[奇談綴り]犬の家出の仲介

家出した犬を無事に家に戻してから1年ほど経った頃だろうか。 その日も学校に行くために、いつもどおりに家を出た。 とても晴れた日で、周囲は同じように登校する生徒でそこそこ賑わっている。 ふと、ふくらはぎに冷たい感触があった。 雨でも降ってるのかな、と空を見上げても、雲ひとつ無い晴れである。 周囲にも、たとえば水撒きのような、水滴に関係ありそうなものは見当たらない。 変だなあと思いながら歩き始めると、やはり冷たい感触が続く。 ポツン…ポツン、と、どこからか滴った水滴が当たるよ

[奇談綴り]お盆の公園

大学生の頃の話。 お盆の帰省で暇を持て余していた私は、飼い犬を連れて近所の公園へ散歩に行こうと思いついた。 犬のほうは散歩といえば何回だってオーケーで、大喜びで着いてくる。ふたりで意気揚々と公園へ向かった。 この公園は少し特殊で、小さい丘が丸ごと公園として整備されている。 頂上には町の貯水タンクがあり、大きなグラウンドとそれに面したエリアだけ桜と松が植えられており道も整備されているが、裏側は里山そのままで、道はあるものの砂利すら引かれていない土のままの状態だった。 来る人も

[奇談綴り]鳴き声

※注意:ちょっとグロテスクな描写があります 実家のそばに、小さな沢が流れている場所があり、そこは以前田んぼだった。 高度成長期のさなかに地元のスーパーに場所を売ったらしく、スーパー建設地という話だけが先行し、そこそこ広いエリアがまるごと荒れ地として放置されるようになった。 もしかしたら相続に絡んで農家をやめたとか、そういう話だったのかもしれない。2本の沢に挟まれていたので住宅地にはできなかったようだ。 田んぼだった部分に土を盛った後は放置されていたので、雑草が生い茂る荒れ

[奇談綴り]補足:実家で飼っていた犬たちの話

ポツポツと書き留めている「奇談綴り」という話には、実家で飼っていた犬たちと、その子どもが出てくる話がいくつかあります。 補足として、簡単な紹介と時系列を書き留めておくことにしました。 最初の犬初代は「タロウ」という北海道犬になります。 私が生まれる直前に、祖父が「長男太郎だ」といってどこからかもらってきたそうです。 祖父は大変自由な人で、数多い友人や知人を把握するのは祖母でも難しく、血統書まであるその犬をどこからもらってきたのかは最後まで言わなかったし、分からなかったそうで