生命の神秘 幼虫が蛹になりました
小学生の頃は、近くの雑木林にカブトムシやクワガタを捕りに行っていました。夏休みには強制的なラジオ体操があるので、ラジオ体操が終わった後に、お気に入りの木がある場所に行きました。お気に入りの木は、雑木林へ向かう細い小道の途中にポツンとある木で、発酵臭がわかるくらいたくさんの樹液を出していました。カブトムシもいますが、スズメバチもいますので、いつもドキドキしながら、その木に近づいていました。
これは小学生の時の話です。秋のある時、近所の子供たちと家の近くの空き地で遊んでいると、空き地の端の朽木が置いてあるところで、一人が変な芋虫を見つけました。その芋虫は、白くて大きくて丸々太っていました。私は、昆虫図鑑の写真で知っていましたから、カブトムシの幼虫だろうとすぐに見当がつきました。でも、実物はその時が初めてだったので、確信はありませんでした。近くの土を掘ってみると、同じ幼虫がワンサカいるので、20匹ぐらいを家に持って帰りました。
家に帰って、しばらく眺めていましたが、飼う場所もないので、玄関先の土を掘って幼虫たちを埋めました。このあと、興味を失って、そのまま放置していました。それから、この事を完全に忘れて半年が過ぎていきました。
年が明けて初夏になったころ、あの時一緒に幼虫を持ち帰った近所の子から、面白い話を聞きました。その子は飼育ケースみたいなので幼虫を飼っていたのですが、あの時の幼虫が土の中に部屋みたいなのを作ったと言うのです。私は、幼虫を放置した場所を思い出して、ゆっくり土を掘っていきました。すると、幼虫が同じように土の中に小さな部屋を作っていました。あとで知ったことですが、これは蛹になるための蛹室と呼ばれるものです。
小学生の頃は分別が無いので、幼虫を蛹室から取り出して、小さなプラスチックケースに入れて観察することにしました。しかし、数日たっても蛹にはなりません。だんだんと、幼虫もあまり動かなくなりました。死んじゃったのかなと思ったころでした。たまたま、幼虫を手に取って眺めていたら、頭の黒い部分がパックリと割れました。しまった、幼虫を触りすぎて傷つけてしまったと思いました。しかし、そうではありませんでした。そのパックリ割れた部分から、角のようなものがニュルニュルと伸びてきました。この時に、蛹化が始まったことを知りました。
その後、蛹化は順調に終わって、タイトル画像のような立派なオスのカブトムシの蛹になりました。さらに、夏休み前には成虫になりました。完全変態の昆虫は、急激に形が変わります。自然の神秘を垣間見た瞬間でした。