一人で気ままにブックトーク【テーマ:不登校等】
現在、不登校と呼ばれる小中学生は19万人をこえている(令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果より)。様々な理由から、学校に行けない小中学生がいる。
問題は、大人がどのように不登校という形で出されたメッセージを受け取り、一緒に歩んでいくかである。しかし、なかなかうまくはいかない。そんな思いに寄り添ってくれる本があるのはありがたいことである。
また、不登校として報告される多くは、小中学生である。高校生は入っていないことも多い。また、(本来はそうではないが)コロナによる欠席として処理され、表面化されない不登校もある。そうしたことに気づかせてくれたのが杉浦氏の著書である。杉浦氏のわかりやすさは、支援の個別の困難はありながらも、3つのステップで進めている点にある。共にする保護者も、わかりやすい、安心感につながると感じた。
最後に、不登校の状態にある人に優しく寄り添ってくれる本を2冊。当事者ではなくとも、学ぶことが多かった。
『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(石井志昴/ポプラ新書)
子どもが「学校に行きたくない」と言った時、どのような対応が親としてできるのかを一緒に考えようとしてくれる一冊。
子どもが学校から離れて、気持ちを落ち着かせることを第一優先に考えられている印象。
『不登校・ひきこもりの9割は治せる』(杉浦孝宣/光文社新書)
不登校の生徒を多く見てきた著者が、社会に復帰するまでの手順を3ステップで整理した一冊。学校に戻ることをゴールにせず、社会で自分の理想に生きていけることをゴールに。
他の本よりも、より具体的に必要なことを教えてくれる。例えば、
こういった情報はなかなか知る機会が無いので、勉強になった。
『不登校・ひきもり急増 コロナショックの支援の現場から』(杉浦孝宣+NPO法人高卒支援会/光文社新書)
前著を踏まえ、コロナ後に支援にどのような困難があったのか、どのような支援が可能なのか、ヒントを与えてくれる一冊。
コロナという壁を踏まえた内容にはなっているが、支援にあたり、何に注目すれば良いのか、どのように向き合っていけばよいのか、学ぶことが多い。特に、ステージ分けと訪問支援時チェックリストは大変参考になった。
また、改めて3ステップのうち、最初のステップを徹底させる難しさを感じている。
『明日、学校へ行きたくない』(角川書店)
あなたの「学校に行きたいくない」という気持ちは、大事にしていい、他にも仲間はいるよ、と安心させてくれる一冊。
「学校に行きたくない」という理由は色々あるけれど、その思いは誰にでも起こりうることである。さまざまな理由を持ったパターンを紹介してくれるので、子どもも読んでいて、安心感につながるのかもしれない。
『かがみの孤城』(辻村深月/ポプラ社)
学校にいけなくなった女の子が、1年間かがみの城で願いを叶えるための鍵を探す。鍵を探すのは、同じ中学校に通う中学生たち。7人の中学生のそれぞれの思いが苦しくなる一冊。
描かれているのは不登校になってしまい悩む女子中学生で、最初は学校に行けないことが物語の主軸になっているかのようにも思う。けど、最後に描かれていたものを振り返ると、それは、人との繋がりや暖かい思い。
「学校に行かない」ことは、日常の人との繋がりの一コマなのだと感じた。それが全てではない。
各本を読んで
「学校に行かない」という選択をした後に、目指すべきゴールは、「学校へいけるようにすること」ではなく、「安心して社会生活を送れるようにすること」だと思った。「社会生活」の中に、人によっては、学校が入っていたり、フリースクールが入っていたり、就職が入っていたり…。
学校という場所にいると、どうしても学校をゴールにしがちだけど、そうではない方向を意識することも大切。ただ、なかなか外部とのつながりが持てない生徒にとって、一番身近な有用感を感じられる可能性のある場所であることも忘れたくない。
編集履歴
・2021年
・2022年1月 追記
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