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空からあの頃を見てみると

街の貌は刻々と変わる。ちょっと油断をしようものなら「あれこの更地、前は何だったけ」ということがしばしばある。漫然と歩いているからだと言われればそれまでだが、定点観測というのは大事だなと改めて思う。フィールドワークの基本じゃないか、しっかりしろ、なんちゃって社会学士。

空から見た地球が好きだ。前沢君のように宇宙からではない。くもじいとくもみと一緒のゆるーい空中散歩がいい。またやらないかなあの番組。

仕方がないので、時々Googleの航空写真であちこちに飛ぶ。テレビで気になる場所があると、おもむろに指を動かし始める。すると探索の目的ではない建物が目に入り、指はあらぬ方向へ。しばしさまよった後、心の中のくもみに突っ込まれ本題に戻る。子供の頃の地図好きはいい大人になってもこんなふうに残っている。

浪人中、東京都杉並区和泉というところに一人暮らしをしていた。木造6畳一間・トイレは共同。京王線の代田橋という駅が最寄り駅で、そこから代々木のマンモス予備校に通っていた。通っていたといっても週3日の聴講生で、あとはアルバイトと名画座通い。右手に参考書、左手に「ぴあ」の二股受験生だ。

2本指の「空旅」をしていたら、まだあった。建て替えはされているもののアパートの名前は変わっていない。区画も変わっていないので間違いはない。オーナーはご子息が継がれているのだろうか。2階にいた明治の学生はもう・・・いるわけない。駅までの通りは庶民的な店が並ぶ小さな商店街だった。残念ながら銭湯はなくなっているようだが、時々入ったラーメン屋の名前を発見。44年の時を超えて、かつこの「禍中」にあって何だか勝手に胸アツなのだ。やはり歩けるうちに自分の足で再訪してみたい。たったの1年間、人生で数少ない「フリー」だった時間だ。


見出しの画像は「ロク」さんの作品をお借りしました。

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