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ただいま休館中。セゾン現代美術館

軽井沢のセゾン現代美術館が昨年11月から休館中だ。開館から40年以上が経過し老朽化した施設の改修工事と庭園整備のため、2026年4月までの予定という。千葉から軽井沢は決して近くはない。幾度も訪ねた地とはいえ、また機会があるとは限らない。美術館を訪れたのはたったの2回、それでも極私的軽井沢のランドマーク的存在なので、新装なって再開されるのが楽しみだ。

足を運んだ2回、開催されていた企画展は一口に現代美術といっても大きく趣を異にする。セゾン美術館の初体験は1990年の「ワイエス展ーヘルガ」、東京から移転する前の高輪美術館という名称がそのまま引き継がれていた。アメリカの具象画家、アンドリュー・ワイエスが密かに描いていた「ヘルガ」シリーズの存在が明らかになって数年後の企画展だった。ヘルガはワイエスの自宅近くにある農場で働くドイツ系の女性。多くの裸婦像を含む作品を彼女の38歳から53歳までを、夫人に知られることなく書き続けた。と、図録の「あいさつ」にさらっと書かれている。ヨコシマな想像なんかはどうでもいい、静謐で透明な作品群は、農業という実業をナリワイとする人だけが持つ深い憂いのようなものを伝えて、ヘラヘラと虚業に勤しむ自分の頬はひととき冷たい風に晒された気がする。

-家の外にいる人を描くなら、その人の表情に空を映し出し、人生を刻むその顔に雲を映し出したい。私はそこに備わっている本質をポートレートにしようとする-
-自分が死ぬまでに、今まで抱いてきたよりもっと深い感情を持てるなら、もっと力強い絵が描けるだろう。それは技術とは何の関係もない。それを超えたものだ-
-ある対象に対して私が探ろうとすることはただひとつ、自分の感動がどれほど高まっていくか、どれほど深くそれに食い込んでいくかということである-

2度目の訪問は2019年の夏「The ENGINE 遊動される脳ミソ/小野耕石 門田光雅」という企画展。身体から生まれ出た「色」を漲らせた2人の作家の展覧会。小野耕石という人は、動物の頭蓋骨などをモチーフに触覚も刺激するアートを展開、門田光雅という人は色や顔料の制限を打ち破ろうと、日本古来に通じる石竹色や浅葱色などの中間色などで描いた作品を展示。どちらも色からキミの脳ミソをぐりぐりしちゃうぞという試み。「へー」とか「ほー」とか頭の中で騒ぎながら楽しく観て回った。

常設展示もクレー、カンディンスキー、マン・レイなど見応えは十分、美術館は緑深い庭園の奥にあり、散在する屋外展示を観ながらの散策もいい。時間はあっという間にすぎてしまう。

館内
レストランの名前は「ヤマアラシ」2019年訪問時のランチであります。

2019年に訪れた時はあいにくの雨模様で庭園をゆっくり散策できなかった。2026年を待って、またいつか訪ねてみたい。


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