漁業の町・志賀島であまおうイチゴ栽培!梅津さん-「新規就農者がどの農地で農業を始めるか」#8
福岡県志賀島でイチゴのハウス栽培をしている梅津さん。これまでエネルギー関連のコンサルタントとして従事した後、会社を退職し就農の道を選びました。なぜ就農したのか、そしてこれからについてお話をお聞きしました。
また、そこから新規就農の際に必ずぶつかる壁「どの農地で農業を始めるのか」について私なりに考えてみました。
梅津さんが農家になった経緯(インタビュー)
➖なぜ農家さんを始められたのでしょうか?
最初サラリーマンをやっていました。会社を辞めようかと悩んでいた時に、別の会社でサラリーマンするのではなくて独立をしたいと考えていました。最初はいろんな選択肢を出していく中に、農業があったかんじです。
ちょうどエネルギー関連の仕事をしていて、余った熱を農業に使う事業をするために、イチゴ農家さんがいくらだったらエネルギーにお金を払えるか考える機会がありました。
そのときにイチゴ農家さんの収益構造を徹底的に調べてシミュレーションをした結果、2反の広さまで農地を広げればイチゴ農家さんが生計を立てられることがわかりました。
そういった調査もあって、農業にすごく面白さを感じていました。将来的にリタイアしたら就農しようと考えるようになっていたので、会社を辞めるときに「どうせ農業するなら早めに就農しよう」と思い、農業の道に足を踏み入れました。
➖その後、他の作物も調べられたと思いますが、なぜ最終的にイチゴを選ばれたのでしょうか?
狭い農地で生計を立てられる作物としてイチゴしかないかなと考えたからです。
➖と、言いますと?
新規就農で、まずは1つの作物に集中したいという思いがありました。
また、農閑期と農繁期の違いがあるにしても、イチゴの場合は年間を通して作業があるため、いま0.5反の農地でも忙しい状況なので、他の作物を一緒に栽培するのは難しいと感じています。
➖なぜ漁業が盛んな志賀島で農業を始めたのでしょうか?
就農する前に、市役所へ相談に行ったんです。
そしたら、いくつか福岡県に研修所があることがわかって、その中でも自宅から通える志賀島に「新規就農者研修施設」がありました。
そこはJA福岡市東部が研修設備を運営しています。
なので、JAが仲介役として農地の斡旋や助成制度活用への各種支援を得ることができるのが魅力でした。
ただ、農地の斡旋についてはかなり苦戦しました。
➖どうして苦戦されたのでしょうか?
やはり見ず知らずの人間に大事な土地は貸せないんだと思います。日当たりや広さなど条件のよい土地は限られますしね。
新規就農者にとって、良い農地を借りるのは、なかなか一筋縄ではいかないですよ。
JAさんにも協力してもらって、だいぶ頭下げに行きました。
➖販売先はどこへ出荷しているのでしょうか?
まだ1年目で、あまり収穫量が多くないので、まずはJAへ出荷しています。
ただ、今後、収穫量が増えてきた時にはインターネット販売も検討しています。インターネット販売はみんながやっているので、難しい印象があります。
周囲からインターネット販売を勧められていますが、今はそこに労力をかけられないのが現状です。
➖年間でどれくらい買取価格が変わるのでしょうか?
一般的には4月だと大体1パック280円ですが12月1月は1パック600円程前高騰します。やはりイチゴが出回っていないときは高くなります。
暖房機を導入すると早くから収穫できるのですが、暖房機を入れた時に機器費用だけでなく燃料費がかかってしまいます。そのため、更に多くのイチゴを収穫しないと利益が出せないため、この地域では暖房機を入れずにイチゴの栽培をしています。
志賀島とは・・・
志賀島は博多湾の北部に位置し、福岡市内から車で30分程の位置にあります。1周約10kmの小さな島で漁業が盛んで、海水浴場やサーフスポットがあるリゾート地としても有名です。
梅津さんのつくった「あまおう」をレビュー
「あまーーーーーーーーい!」
そうです、スピードワゴンの井戸田さんくらいの勢いで言ってしまうくらい、甘いです!(古くてごめんなさい笑)
少し感じられる酸味が甘さをより際立てていて、気づいたら井戸田さんになっていました。
それだけじゃなくて、肉厚な果肉がすごくジューシー。
こんなイチゴを食べた日にはルンルンです♪
いただいた時期(4月)頃になると、収穫し始めの頃に比べて段々と味が落ちてくるそうなのですが、それでもすごく甘くておいしかったです。
購入できる場所
梅津さんのあまおうイチゴは現時点だとすべてJA出荷のため、お近くのスーパーにあまおうイチゴがありましたら、もしかしたら梅津さんのイチゴかもしれません。(2021年5月24日更新)
どの農地で農業を始めるのか?
さて、農家の高齢化による後継者がいない問題で耕作放棄地が課題とされていますよね。でも、地域によって新規就農者側も借りれる農地の課題を抱えていることがわかりました。
じゃあ、農地を探す方法は何があるのか?農地をどう確保したらいいのか調べてみたので以下にまとめてみました。
そもそもどうやって探せば良いのか?
すごくわかりやすく掲載されているので、詳しくはこちらをご覧ください。内容をまとめると、主に4つの方法があります。
1. 役場(農業委員会)の窓口に問い合わせる
2. 知人の農家に直接相談する
3. 農地中間管理機構(農地バンク)に問い合わせる
4. 「全国農地ナビ」サイトで調べる
じゃあ、農地を確保するには?
農業を始めるとき農地を確保するには以下の要件を満たした上で、原則は農業委員会から許可を受ける必要があります。この許可を受けるには、農地法3条の申請が必要となり、取得する農地と同一または隣接の市町村に住むことが原則となります。
1. 農地のすべてを効率的に利用できること
2. 必要な農作業に常時従事すること
3. 一定の面積(原則50アール※)を経営すること
4. 周辺の農地利用に支障がないこと
※この面積は、地域の実情に応じて、農業委員会が引き下げることが可能となっています。(各地域の面積については、市町村の農業委員会に要確認)
農地取得の手続きは、市町村の役場にある農業委員会等が窓口になっています。
新規就農者の農地を探すには結局信頼が大切。
上記に農地を確保する方法を書きましたが、知人の農家さんに聞いてみると、中間管理機構や「全国農地ナビ」サイトの存在自体を「知らなかった」という声がありました。また、貸す側からはそういった存在があっても「借りる人が誰かわからないのは不安」という意見もありました。
このような背景から、当初の想定よりも活用されず、信頼できる人や農業委員会の紹介で農地を賃借・売買する方法が主流なんだと思います。そのため、貸したい農地は新規就農者ではなく、その地域の既存の農家へ相談され、段々と農地は既存農家へ集約されてきているのだと感じています。
新規就農者にとっては、依然として希望する条件の農地を取得するのが難しい状況ですよね。
今後は、地域で信頼されている既存農家と市役所が密接に繋がり、新規就農の相談があれば情報を握っている既存農家さんと連携して紹介していく方法が最も良いのではないかと考えています。が、それをどう持続可能にできるか、やはりここも課題が残ります。
もし他にアイディアや方法があれば、ぜひお気軽にコメントいただければ嬉しいです。
いずれにしても、「農業したい」と思っている人にとって農業を始めやすい環境を整えることは、今後、就農者数の増加と離農者の減少に向けた大きな一手になるのではないでしょうか。
【参照元】
農林水産省「農地の売買・賃借・相続に関する制度について」
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「なぜnoteをはじめたのか?」はこちらをご覧ください。
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