見出し画像

ロシアの食卓に欠かせないスープの話をききながら、魚のスープ「ウハ」を作る

『はじめてでも美味しく作れるロシア料理』著者ヴィタリさんに訊く、もうちょっとロシア料理のことーvol.3ー

料理が大好きというロシア人のオペラ歌手、ヴィタリ・ユシュマノフさんのとっておきのロシア家庭料理のレシピが、はじめてでも美味しく作れるロシア料理という一冊の本になりました。本に収めきれなかった貴重な解説を含め、いくつかのレシピを特別に公開する連載です。
今回ご紹介するのは、ロシアの食卓に欠かせないスープの話と、「ウハ」という魚のスープのレシピです。数種類の魚を使うことで味わいに深みが出るスープは、日本人にも好まれる味です。ぜひ作ってみてください。
前回の記事はこちらからどうぞ。

ロシアのスープ

人類がいつからスープを作っていたのかはわかりません。ただ、一番古い料理書とされている、3000年前に書かれた中国の料理の本には、もうスープの章があったそうです。でも、「焼く」料理よりは歴史は浅く、土鍋が出来た頃から始まった調理法のようです。

古代ロシアでも、最初は土鍋で作られていましたが、次第に銑鉄の鍋が使われるようになり、ストーブで作られていました。

ッシー(ロシアでもっともポピュラーなスープ)やボルシチなど、スープのないロシアの食事はあり得ません。それぐらい、スープはロシア人にとって大切な料理です。
食材や料理法が定まっていなかった大昔は、ごった煮のようなスープも多かったようですが、そんな時代を経て、今ではバリエーションも豊富な料理になりました。

風味豊かなさまざまな肉、魚、野菜を使ったブイヨンで作られたロシアのスープは、調味料にも特徴があります。 根菜やハーブも広く使われています。
なおスープにパン、ピロシキを合わせたり、サワークリームを添えることは、ロシアの慣習です。

魚のスープ「ウハ」

「ウハ/Уха」は、釣り好きの人たちに特に人気のあるスープです。
11~12世紀は、魚や肉、野菜のブイヨンを使ったスープのことを「ウハ」と呼んでいました。それが次第に他の食材を入れたり、別の名前が付いたりして変化を遂げ、18世紀には、魚をベースとしたスープだけを、「ウハ」と呼ぶようになりました。

15世紀にはベーシックなレシピとして確認されていますが、当時はスープの味だけでなく、脂肪含有率が重要だとみなされていました。脂肪分が足りないときは、バターやオイルなどを入れたりしたそうです。
魚は様々な種類を使い、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもなどの野菜が入りました。また当時から、白パンやピロシキなどと併せて食べました。

19世紀の後半からは、フランス料理の影響で、脂肪分が少ないクリアなスープの「ウハ」が好まれるようになりました。

現在は、ベースとなる魚ならではの味わいを楽しむために、魚を1種類だけ使うべきか、あるいはもっとリッチな味わいを楽しめるように2~3種類の魚をミックスして使うべきか、との論争があります(ここでご紹介するのは数種類の魚を使うタイプです)。

ところでこのスープを作るときは、その味を損なわないようにするために、酸化の心配のない(アルミや銑鉄製ではない)鍋を使うことが、大事なポイントです。

【材料】作りやすい分量

白身魚のアラ(頭、尾、大きい骨などを使う。ここではいさきを使用)………適量
白身魚の切り身(2~3種類。ここではさわら、たらを使用)………400g
じゃがいも………1個
にんじん………1/2本
セロリの茎………1本分
玉ねぎ………1個
湯………1ℓ
塩………4gほど(お好みで)
黒こしょう(粒)………8粒ほど
ローリエ………1枚

【作り方】

1)魚のアラ、セロリの茎、玉ねぎ1/2個を鍋に入れ、湯を注ぐ。火にかけて沸かし、アクを取る。
2)弱火にして黒こしょうを加え、蓋をして30分ほど煮出す。材料を取り出す。これが魚のだし。
3)じゃがいもは1cmほどの角切りに、にんじんは薄い半月切りに、玉ねぎ1/2個は薄切りにする。
4)3を2の鍋に入れ、中火にかけて沸かす。蓋をして弱火にし、5~7分ほど煮る。
5)白身魚の切り身を冷水でよく洗い、ひと口大に切る。
6)5を4に入れ、塩も加えて沸かす。蓋をせず、弱火で10~15分ほど煮る。適宜アクを取る。
7)ローリエを半分に折って加える。火を消し、蓋をして、5分ほど休ませる。
白パンやピロシキと一緒に召し上がれ。

次回は3月11日(金)に掲載予定です。どうぞお楽しみに!
これまでの記事は、こちらから。

文:Vitaly Yushmanov(ヴィタリ・ユシュマノフ)/サンクトペテルブルク生まれ。マリインスキー劇場の若い声楽家のためのアカデミーで学ぶ。ライプツィヒ音楽演劇大学を卒業。2015年春より日本に拠点を移す。びわ湖ホールオペラ、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」、「東京・春・音楽祭」、NHK-FM、NHKワールド・ラジオ日本、BSテレ東、NHKワールドTV、東京芸術劇場他の全国共同プロジェクト、新国立劇場オペラなどに出演。「日本トスティ歌曲コンクール」第1位、「日伊声楽コンコルソ」第1位、「東京音楽コンクール」など、受賞多数。これまでに4枚のCDをリリース。幼いころからの料理好きが高じ、YouTube「Café Vitaly」(カフェ・ヴィタリ)でも、その腕を披露している。
オフィシャルサイト:http://vitalyyushmanov.com/
twitter:https://twitter.com/vitaly_jpn
写真:ローラン麻奈


この記事が参加している募集