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『伝説の家政婦志麻さんがうちに来た!』をワーママにお勧めする理由

テレビでもすっかりお馴染みの“伝説の家政婦”タサン志麻さん
今回は「#読書の秋2021」でも課題図書になっている『伝説の家政婦志麻さんがうちに来た!』の担当編集者・三宅さんに、この本の見所や製作秘話を伺いました。ぜひ感想文投稿の参考にしてみてください。

書影5_伝説の家政婦志麻さんがうちに来た!

「”必ず子どもと食卓を囲む家庭”で実際に料理を作ってもらいました」

――志麻さんは、本もたくさん出していらっしゃいますが、この本の見所を教えてください。

この本は、サブタイトルにも「ワーママでも簡単! 子どもが喜ぶおうちレシピ61」とあるように、忙しいお母さんの助けになれば、という思いで作った本です。
6軒の家族が登場しますが、いずれもお子さんがいるご家庭です。シングルマザーと子どもの二人暮らしとか、部活に通う食べ盛りの子どもがいるとか。それぞれの家族の事情によって、食事の環境やお母さんの悩みが違います。家族構成や悩み別に、テーマを大きく3つに分けて紹介していますが、“必ず子どもと食卓を囲む家庭”を取り上げることにこだわりました。あと、必ずスープとデザートを作っていただくようにしていました。デザートがあると、お子さんが喜ぶので。

悩み見開き


――取材や撮影はどんなふうに進めていったんですか?

志麻さんが家政婦として働いていらっしゃる時と同じように、各家庭に伺って、そこで撮影させていただきました。まさに密着取材、という感じです。
最初に、各家庭のお母さんから食事に関する悩みを伺ってその解決策を志麻さんに考えていただきました。料理は、そのアドバイスに沿ったものを作っています。
だいたいどのお宅にもあるような食材を使っていますが、「たまたま切らしていた」という食材については、志麻さんが「これでも代用できます」とその場で食材をアレンジしたりして、さすがでした。
それぞれ3時間ほどの滞在で、10~11品の料理が次々と出来上がりました。プロセス写真は、志麻さんが料理を作る流れを止めないように、「ここ!」というタイミングを見て、カメラマンがパッとキッチンに入って撮りました。

見開き完成


――それもあって臨場感あふれるページになっているんですね。

読者には、疑似体験をしていただきたいと思いました。この本を読みながら、本当に「志麻さんがうちに料理を作りに来てくれている」ように感じてもらいたくて。料理を同時進行で作っている感じを、時系列で見せられないかなと工夫しました。
それでご家庭ごとに、最初に「悩み」とそれに答えるページを設けて、材料、プロセスを見せ、できた料理の写真を見せて……という流れを意識して作りました。本当はもっとライブ感を出したかったんですが、本で表現するのは、なかなか難しかったですね。

悩みへのアドバイス見開き


――本を作るうえで、ほかにも工夫したことはありますか?

対象読者は、“働いているお母さん”で、日頃からごはんを作っている人。時間の余裕もあまりない、という人も多いので、作り方の説明は「100文字レシピ」を意識しました。つまり、ポイントだけ。
A5判というコンパクトなサイズの本なので、61品ものレシピを紹介するためには、丁寧にプロセスを説明しようとしても、入りきらなかったという事情もあります。「ここは長くなってもどうしても説明したい」というところは入れていますが、そういう意味では、入門者・初心者よりは、ある程度、料理ができる方向けの作りになっているかもしれません。

「料理はどれも身近な食材で、簡単に作れて美味しいものばかりです」


――料理はどれも美味しそうで、作り方も簡単そうに見えますが、実際に作ろうと思ったら難しいのでは?

本当にどれもけっこう簡単ですよ。
煮込み系の料理が多いから、食材を鍋に入れて火にかけちゃうとか、オーブンに入れっぱなしにしちゃうとか。忙しくても、本当に同時進行でできちゃいます
私も実際に作りましたが、たとえば、アクアパッツァ。材料を鍋に入れてお酒で煮るだけで、こんなに美味しいなんて!と驚くほど簡単です。
あと、農家風の野菜スープとか。これも本当にすごく簡単です。野菜の旨みがスープの出汁になっていて、とても美味しいです。あとドーナツサレじゃがいものガレット。これも簡単で美味しいうえに、材料費も安い。志麻さんの料理は、あまり高価な材料を使わないので、基本的に安く作れるのも魅力なんですよ。

料理だけ見開き

「コロナ禍に、いろいろな意味でハマりました」


――いろいろな工夫や苦労が詰まった本ですが、刊行されたのは2020年の春先でした。ちょうど新型コロナの感染が拡がり始めていた頃でしたが?

最初に志麻さんに企画書を送ってオファーしたのが、実はその約1年前の4月頃でした。志麻さんはとてもお忙しい方ですが、たまたま出産を控えた臨月だったので、産休に入るために、ぽっかり予定が空いていたんです。それですぐに打ち合わせができました。産休・育休でちょうど1年間は家政婦としての仕事は休みになる、というタイミングでしたから、生まれたらレシピ本を作る時間が取れますよ、と言ってくださって、もうその後はトントンと話が進みました。
赤ちゃんを生んだばかりでそんなことできるのかなって、こちらは心配になったのですが、志麻さんは、生後4か月の赤ちゃんを抱っこして、撮影するお家に来てくださって、もうふつうに普段どおりに料理を作っていました
でも、ぐずってしまって撮影が大変だった時も、実はあるんですよ。志麻さんは料理を作る時は、すごく集中していらっしゃるので、赤ちゃんが泣いたら、手が空いているスタッフが交代で見ていました。志麻さんの旦那さんにも助けに来ていただいたりして、撮影を乗り切りました。

――志麻さんご自身がまさに「ワーママ」だったわけですね。そして、本の発売のタイミングで、緊急事態宣言が?

校了は昨年の3月4日頃でした。発売はその2週間後でしたから、まさに新型コロナの感染拡大が始まった頃です。それでこの本が出たとたんに、緊急事態宣言で書店も閉まり、ネット書店も出庫制限がかかったりして流通も止まってしまいました
そのころ、NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』という番組の「おうち時間」テーマで志麻さんが何度も取り上げられました。そのたびに大反響だったんですが、残念ながら本の流通が止まっているから、本が欲しくても買っていただくことができません。それで急いで電子版を作って、欲しい人のところに届けられるように、工夫しました。リアル書店が閉まっているので、ネット書店にも「少しずつでもいいから入荷してください」とお願いし続けましたが、なかなか入れてもらえませんでした。ニーズがあるのに、ネット書店でもすぐに売り切れてしまい、読者に本をなかなか届けられないのが辛かったですね。

――その後、コロナ禍が続いたわけですが?

本当に、世の中ががらりと変わりましたよね。もしも企画提案が半年遅かったら、本も作れなかったかもしれません。
その後、志麻さんも育休が明けて、『沸騰ワード10』などテレビに毎週のように出演されました。それまでにも出演されてはいましたが、コロナ禍で“おうち時間”が注目されてから、反響がより大きくなったようです。志麻さんの本は沢山出ていますが、番組に出るたびに、その全ての本がベストセラーになるぐらい、話題が“沸騰”していました。この本もその波に乗って毎月のように重版がかかり、現在10万部が出ています。

「”時間がないけれど、ごはんづくりの必要に迫られている人”におすすめの本です」


――この本をどんなかたに読んでいただきたいですか?

“ワーキングマザー”向けを謳っていますが、対象読者はワーママには限りません。“時間のない中で、ごはんづくりの必要に迫られている人”に読んでいただきたいです。
「すぐに作ってすぐに食べさせなくちゃ」という時に、「これならぱっと作れそう」と思っていただける料理が載っています。すぐに揃えられる食材ばかりですし、家にあるもので作れる料理も多いです。
お惣菜を買ってくるのもいいけれど、やっぱり毎日だと栄養が偏ります。外で食べるのも美味しいし、たまにはいいけれど、毎日は辛い。家族がいれば、やっぱりみんなでゆっくり、お家で食べたいし、どんなに忙しくても、簡単なものでもいいから作ってあげたい、という気持ちに応えたいですね。

志麻さんのメッセージ見開き


――最後に、この本は「#読書の秋2021」の課題図書になっていますが、どんな感想文の投稿を期待していますか?

家族構成や事情によって6つのテーマがあるので、まずは自分の家族構成に近いテーマを選んで読んでいただくのがいいかなと思います。毎日ごはんを作るのって、疲れちゃいますからね。どれか一つの料理を選んで、作ってみていただいてもいいです。子どもの年齢で分けているので、ご自分の環境に一番近いページから読んでいただけたら。
厳密にいうと、全部フレンチではないのですが、基本的にフレンチ風の料理なので「フランス料理って簡単で美味しいものだな」「あ、これもフレンチなんだ!」って知っていただき、定番料理のひとつに加えていただくことで、マンネリに陥りがちな食卓が少しでも見違えるようになったら嬉しいですね。
あと「この本ではこう作っていたけれど、こうしてみました」とか、「子どもがコレが好きだからこうしてみました」なんていう投稿もあったら嬉しいです。

三宅さんは、『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(夏井いつき著)や、『いちばん親切な更年期の教科書』(高尾美穂著)など話題になる本を次々と作ってきた敏腕の書籍編集者。他にはない工夫と視点を持った『伝説の家政婦志麻さんがうちに来た!』を、ぜひチェックしてみてくださいね。「#読書の秋2021」への感想文投稿も、お待ちしています!
#伝説の家政婦志麻さんがうちに来た」のハッシュタグもお忘れなく。