工作好きも、たいがいにして!
長男は、とにかく工作好きだった。
レゴで宇宙戦艦ヤマトとかサンダーバード2号とか、けっこうすごいものをほぼ基本のパーツだけで作り上げる。幼稚園でいろんなモノを作ってくる。
はじめての子だったので、親もいろんなことに無駄な力が入る。
小学校入学にあわせた学習机の購入も、そう。高校まで使えるように、予算と相談しながら木製の学習机を買った。
せっせと工作をするから、机の上はいつもゴミとガラクタのうずたかい山。毎朝、長男が登校したあとで、私はうんざりしながら片付ける。
その朝も、ため息まじりでガラクタを片付けていた。
鉛筆、消しゴム、ホッチキス、ねじ、トイレットペーパーの芯や瓶の蓋などがごっちゃり。それらをしまおうと、引き出しを引いた。
開かない。
ガンガンと力を込めて引く。びくともしない。もう一度、力まかせに引いたが開かない。
イライラが募る。かがんで引き出しの口を調べた。
手前中央あたりに何か銀色のものが立っている。
――これが原因か。
でも、引き出しの中で引っかかているにしては、何かおかしい。引き出しの前板に刺さっているのだ。
慌てて学習机の上のビニールのマットをのけ、茫然とした。
机から引き出しまで貫通する、直径1センチほどの穴が刳り抜かれているではないか。そして、その穴に釘が刺さっていた。
買ってから3カ月も経っていない真っさらな机の無惨な姿に、愕然とした。
刳り抜かれてしまった穴は、もう、どうしようもない。せめて「引き出しとしての機能」を取り戻すためには、この釘を抜かなければ。
ところが、釘の頭は机の上面から出ていない。刳り抜かれた穴が大きかったからか、縁から1センチ近く落ちたところにあった。穴はクレーター状になっていて、その中心に釘が落ち込んでいる。穴は大きいといっても、私の指は入らない。
途方にくれ、めらめらと怒りが沸騰してきた。
けれど、そんな日に限って、長男は待てど暮らせど帰って来ない。
ようやく帰宅した長男をつかまえて、机の前に連行した。
「引き出し開かないよ。どうするの!」
私は声を荒げた。
ところが、長男はきょとんとした顔をして。
「お母さん、アホやな」と言いながら、本棚の下に付いている小引き出しをごそごそ。細い棒のようなものを取り出した。
「こうすれば、取れるやん」
すーっと釘が、上に持ち上がった。
手に持っていたのは、細い棒磁石だった。
息子はにっこり笑って「ほら、な」。
私は脱力した。
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