波佐見焼の急須
いつも使っている急須の柄が取れた。一度接着剤で付けたがまた取れた。夫が新しい急須を買ってきた。くすんだ白の、ちょっとスタイリッシュな急須だ。急須というより「ポット」と言った方が良いのかもしれない。茶こしの網もついている。
夫は自分が買ってきた物は絶対にほめる。「なかなか、おしゃれだね」「この、白っぽくない白がいい」
フタの所に「波佐見焼」とt小さなシールが貼ってあった。ふたりで「知らないね」と言ってネットで調べてみた。長崎県の焼き物とわかった。
次の日、夫が「波佐見焼が新聞に載っている」と言う。私は見逃していた。いつも新聞は10分くらいで読み終える夫だが、こういうときはさすがにアンテナが反応するらしい。自分が買ってきたから。
波佐見焼とは
まずは新聞記事から。
1回目は2023年12月12日(火)朝刊
6面、経済・総合面の「けいざい+」というコーナー。
見出しは「波佐見焼 小さな町の奇跡」「有田じゃない 気づいたルーツ」
5回シリーズ。
ざっくりと紹介を。
【要約】
①波佐見町は、有田焼で知られる佐賀県有田町の隣町。有田同様400年余の焼き物の歴史がある。ずっと有田焼の下請けに甘んじ、ほとんど知られてこなかった。
②それが輸入牛肉の産地偽装問題が飛び火。波佐見は有田から「有田焼の名前を使わないでほしい」と言われてしまう。
③波佐見は波佐見でやるしかない。歴史を考えると、波佐見焼は庶民の器を大量生産し、江戸や上方に出荷してきた。
「そうだ。俺たちは生活の器を作ってきたんだ」
④波佐見町で先駆的な窯元である白山陶器は、先代社長が1956年にデザイン室を設けている。差別化を図る要素に考えたのがデザインだった。
「これからはスタイリッシュなデザインが重要だ」と気づく。
東京で行なわれるフェスティバルに参加し続けると、問い合わせがひっきりなしにあった。
⑤いろいろあって(割愛)波佐見焼はテーブルウェア・フェスで人気となり、「かわいい」という最大級の賛辞を得る。波佐見焼のブランド化が進む。カジュアルリッチというそうだ。
【終わり】
新聞記事から考えたこと
波佐見町には「西の原」というところがある。廃業した製陶所の跡地がしゃれたカフェやレストラン、雑貨店に生まれ変わり、九州を旅する女性に人気のスポットだそうだ。
最終回の記事では、波佐見焼ブームを牽引したマグカップ、積み重ねられるカラフルな「HASAMI」ブランドのことが書いてあった。焼き物問屋のマルヒロが「伝統工芸産業を元気にするコンサルティング」を受け、ヒット商品を作り出した。
伝統があっても時代の波に乗らないと停滞していく。その反対にやり方によっては、地域おこしにもなっていくんだなと思った。
長い歴史を紡いできた技術や見識などは貴重。でも、魅力をわかってもらうためには昨日と同じことを続けるだけでなく、視点の変換とか新しいことにチャレンジする勇気とかが必要なのだろうと思った。伝統の力を生かしていく方法がきっとある。
我が家の急須
さて、我が家の急須は大活躍である。デザインも良いけど、注ぎ口が細いので、お茶を入れるときに気持ちが良い。こぼれない。
急須の裏にシールが貼ってあって、「使う前にぬるま湯につけていただくと、茶すじがつきにくくなります」と書いてあったので、その通りにした。
新聞記事がこのタイミングだったのもあるけど、フタに貼ってあった小さな「波佐見焼」というシール。ここから広がって、陶器の技術や歴史、デザイン、伝統を守ることなど、いろいろなことを考えることができた。
このシールも、きっと「波佐見焼」を広く知らしめるための作戦に違いない、なんて思ったりする。役目は果たしたので、そろそろ剥がれてもいいのだけど、まだ剥がれない。
フタの裏には「幸」という字が書いてある。それも何だか「憎いね」「おぬし、やるな」という気がするのである。
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新聞記事は最終回のみ貼っておきます。馬場さんかっこいい。(何を言う)
波佐見焼について詳しくお知りになりたい方。マルヒロをコンサルティングした中川政七商店の記事がわかりやすかったです。(貼って良いのかわかりません。後で消そう)
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