読書日記「注文をまちがえる料理店」
同じく市民福祉大学福祉ライブラリーで借りた本です。
料理店の始まりは
著者の小国士郎さんはテレビ局のディレクター。ある日、和田行雄さんが統括マネージャーをつとめるグループホームに取材に行きます。昼食は予定ではハンバーグ。でも出てきたのは餃子。
別にいいんですよね。誰も困らない。間違えたって、美味しければ何だっていい。そう思ったそうです。
そのグループホームに入居している方々は認知症の状態にありますが、買い物も料理も洗濯も、自分でできることはすべて自分でやります。
そこから小国さんは『注文をまちがえる料理店」を思いつきます。認知症の方たちにホールスタッフとして働いてもらおう。プロジェクトが動き出し、たくさんの人の力が一つになって、企画を実現させます。
プレオープンを経て、本開店が3日間行なわれました。
ホールで働く方々は仕事をして、とても楽しそうでした。注文をまちがえることはありました。でもなんとなく納まるのです。みんな笑顔です。お客さんも、いろんなことがあっても受け入れる優しさがありました。お給料ももらいました。
認知症の奥様の弾くピアノとご主人のチェロが店内に流れます。奥様は何度も間違えて止まるけど、ご主人が「こうだよ」と教えて再開します。
お年寄りの力
「認知症の人は、人をよく見ている」
以前高齢者支援の仕事していて、お年寄りの力を感じることがよくありました。人生経験もたくさんで、その言葉は「なるほど、そうなんだ」と思わされました。
認知症になっても、人柄は変わらず、気を遣う人も多いです。本の中でも、「美容院で働いていたから、立ち仕事はなんでもないのよ」という元美容師さん。今まで働いてきた気概を持っておられることが分かります。
もちろん、人や認知症ははそれぞれで、この料理店で働ける方は限られるかもしれません。もっと進んでしまえばできることも限られるでしょう。でも、その他の場面であっても、どんな方でも、できることはあって、少しの手助けがあればいきいきと生きることができると思います。
誰にでも役割があれば
先週の朝日新聞、松本先生のコラム。「その人にあった役割を見いだすことが大切な精神的サポート」と書いておられました。
年を取ると、手伝ってもらうことばかりが増えます。でもその人に合った役割があれば元気になる。この本とコラムとつながりました。
プロジェクトの力
「注文をまちがえる料理店」プロジェクトの人々の思慮深さと結束の堅さに感銘しました。新しいプロジェクトを立ち上げるのに、必要なのは仲間。今回小国さんの出した条件は、
こういうところ面白いですよね。よく考えておられます。そして、それぞれ得意分野の方々が協力していきます。デザインとかお金集めとかITとか介護の知識とか。
そして大事にしようと決めたルールの一つが「料理店としてのクオリティにこだわる」でした。「レストランのおしゃれな雰囲気」「美味しい料理」
「間違ってもいいけど、間違わないための工夫」
「間違うのはつらいという認知症の人の気持ちも理解している」
認知症の方たちの姿を「当たり前の風景」と暖かく見守る視線。
細心の注意。そして一緒に間違いを楽しむ、そんな仲間とプロジェクトができたらいいですね。
プロジェクトの話から「仲間」について考えました。
厄介者から「あ、普通だ」
本の最初に出てきた名前。「あ!和田さんだ」と思いました。和田行雄さんのDVDを持っています。市場に出かけるところや、施設には鍵をかけないので、出てしまって行方不明になり心配するところも見ました。
買い物に出かける市場の人の話です。
「普通だ」と受け入れる。ここが面白いし大きなヒントになると小国さんは言います。
全部のグループホームが、和田さんのところのようにできるわけではない。でも、これからの介護のあり方を示唆していると思います。
《諦めない心》
最後に
今回この本をたまたま選んだのですが、話があちこちつながりました。本とは出会いですね。装幀も、可愛らしいイラストもあり、素敵です。ちなみに「まちがえる」の「る」は横向きにひっくり返っています。間違っています。
本の題名:注文をまちがえる料理店
著者:小国 志郎
出版:あさ出版 (2017年初版)
もっと詳しく「注文をまちがえる料理店」のことをお知りになりたい方は、You Tubeで見つけましたので、どうぞ。