映画日記「かづゑ的」~ひとりの人間
大阪上映初日に舞台挨拶もあるというので、見てきました。
いつもの小さな劇場。埋まりそうだったので前日にネット予約しましたが、満席で、立ち見も出ていました。
かづゑさんは瀬戸内海にある国立ハンセン病療養所、長島相生圓に10歳で入所します。それから約80年。ずっとこの島で暮らしてきました。病気の影響で手の指や足を切断し、視力もほとんど残っていません。
いろいろな出来事を乗り越えてきたかづゑさんを、8年間にわたって取材したドキュメンタリー映画です。8年間というのもすごいね。
かづゑさんのパワー
かづゑさんは、明るい。
かづゑさんは、力強い。
かづゑさんは、何でもやってしまう。
こんなふうに書いていったら書き切れないほど、たくさんの力を持った人です。言っている言葉のひとつ一つが力強い。思いが深い。こちらの心に届くのです。パンフレットに「かづゑ語録」のページがあるくらいです。
最初に、「ライ患者は、絶望なんかしていない」と言います。(かづゑさんは、敢えてライ患者といいます)
入浴シーンもかづゑさんからの提案だったそうです。いいかっこをしていては本物は出ない、と。
あのシーンがあったから、見ている方は、かづゑさんの身体も心も、少しはわかることができたのです。
言葉と映像。
等身大のかづゑさんの姿に惹きつけられました。
療養所の生活
かづゑさんが療養所に来てからのことが語られます。
10歳で親元から離されて、島に連れてこられたことだけでも、充分につらいことです。かづゑさんの家族は優しかったそうです。だから、余計に悲しくて、寂しかったことでしょう。
不自由になっていく手と足でも、できることは何でもやってきました。
療養所の生活には、いろいろな苦難も苦しみもありました。かづゑさんは「みんな受け止めて、逃げなかった」と言います。
「私の真ん中に、針金のように細くて固い、芯のようなものがある」と言われていたのが印象的でした。それが支えていたのでしょう。すがっていたのかも。
夫の孝行さんとのコンビもなかなか微笑ましいものでした。二人だからこそ、乗り越えられたこともあると思います。
読むと書く
療養所生活の中で救いだったのは、読書だったそうです。パンフレットに、お気に入りの本が載っていましたが、難しい本ばかりで、「私、読んでへん!」と思いました。
言葉に力があるのは、この読書量があってこそだと思います。
そして、パソコンを覚えて本格的に文章を書き出したのが70歳代の終わり。『長い道』という本を出したのが、84歳の時だそうです。私、まだやれる!
ひとりの人間
舞台挨拶や、パンフレットの中で、「かづゑさんはチャーミングでかわいい人」と言われていました。
「かづゑさん」という存在。
それは、ハンセン病患者とか、障害者とか、高齢者とか、そんなこと関係ない。ひとりの人間としての魅力であり、映画にあるのは、そんなひとりの人間の力強い生き方である、と監督も言われていました。
「人間にとって普遍的なことを撮ったつもり」と言っておられて、私もそう思いました。
強いばかりではなく、人間だから弱さもある。きれいなことばかりではない。私の裏側もちゃんと撮れているか、とご本人が言われていたそうです。
最後のシーンも心に残りました。
ハンセン氏病は、目が悪くなります。かづゑさんもほとんど見えなくなっています。そしてサングラスが欠かせません
でも、そのサングラス姿がめっちゃカッコイイ!かづゑさんでした
舞台挨拶
舞台挨拶は楽しみです。今回も熊谷監督、そしてナレーションの斉藤とも子さんが登壇。直接話が聞けて良かった。面白かったです。斉藤とも子さんが、それこそかわいくてチャーミングでした。
おふたりにサインしてもらいました。この、サインをしてもらっている10秒間に何を伝えようかと考えます。しまった!言わなきゃ良かったと思うことも多々ですが。
たくさんの人に見てもらいたいと思いました。
私が行ったのは、大阪の第七藝術劇場(ナナゲイ)です。
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