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往復書簡:豊かな表現への道しるべ

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ひとりの本好きの紡ぐ言葉に憧れて始まった往復書簡です。読み方・伝え方を学び、作品から汲み取った思いや心に湧いた感情を、ほっとするような言葉で書いていきます。
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#手紙

衝動に身をまかせる——セルバ・アルマダ『吹きさらう風』、車谷長吉『贋世捨人』

拝啓 やはらかに柳あをめる岸辺を歩きたい。そんな季節になりました。水面に映る青をみて、あ…

既視の海
10か月前
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「誰が正しいのか」よりも知りたいのは——トーベ・ヤンソン『誠実な詐欺師』、日高敏…

拝啓 夏の忙しい日々が、ようやく終わりました。のびた髪を切り、傷んだ靴を新調し、ゆがんだ…

既視の海
1年前
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往復書簡~強い懐疑心を抑えて~

拝啓 8月に入り、こちらはすっかり夏らしくなりました。この耐え難い暑さの中、健やかに過ご…

書かれた言葉ほど、書いた人の不在を感じるものはない——ダヴィド・フェンキノス『シ…

拝啓 半夏生に大雨はつきものですが、災害の報に胸が痛みます。あなたが暮らす地方はいかがで…

既視の海
1年前
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往復書簡~いっしょに歩きたいです~

拝啓 日中の陽射しのおかげで、出かけるときには蕾だった花が帰宅する頃には咲きかけていて驚…

あえて苦しみを引き受ける愛——辻 邦生『光の大地』

拝啓 満開だった桜が少しずつ散り始めました。ふんわりと舞う花びらは、春の光とともに祝福し…

既視の海
1年前
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ひとりの本好きが、本好きの友だちに出す手紙

はじめまして。 まだ名も知らぬあなたに、このような手紙を書く不躾さをお許しください。驚かれたでしょう。 庭のもみじは半分色づきました。週明けにはすべて赤く染まるでしょう。左後肢に障害のあるわが家の愛犬も、日なたぼっこが気持ちいいようです。秋も深まってきたのでしょう。 あなたにこうして手紙を書く理由。話せば長くなるでしょう。でも恥ずかしさを捨てて勇気を出して書くならば、きっかけは書評を書こうと思ったことです。 書評。読書家であれば、書こうと考えるのは一度や二度ではないで