あえて苦しみを引き受ける愛——辻 邦生『光の大地』
拝啓
満開だった桜が少しずつ散り始めました。ふんわりと舞う花びらは、春の光とともに祝福してくれるかのようです。まだ一日のうちで寒暖の差が大きく、寒の戻りもあるかもしれません。でも、暖かい日差しのなかで一歩ずつ大地を踏みしめるあなたを想いながら、辻邦生『光の大地』を手に取りました。
ただ、山本容子さんの挿画からして、舞台は春ではなく、常夏のタヒチですね。タヒチといえばゴーギャン。本書を読む前から、次はきっとサマセット・モーム『月と六ペンス』を手に取りたくなるような予感が。い